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スペシャル
チーフ・アーキテクトとOSSの専門家に聞くIBM i 7.4の最新動向 
IBM i は「2025年の崖」を乗り越えるプラットフォームであり続けるのか

2019年11月19日


「User & IBM NEXT 2019」(福岡市)の開催にあわせ、米IBMよりIBM i チーフ・アーキテクトのスティーブ・ウィル氏と、OSSのサポート拡大を担当するケヴィン・アドラー氏が来日した。2019年も終盤に差し掛かったが、今年の最大の話題は何といっても4月23日に発表された「IBM i 7.4」だ。3年ぶりのメジャー・リリースとなるこのプラットフォームは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の動きにどう対応していくのか。注目すべき機能や今後の開発方針について話を聞いた。

左から ケヴィン・アドラー氏 / スティーブ・ウィル氏

 

IBM Db2 Mirror for iで継続的な可用性を強化

――今年4月に発表されたIBM i 7.4について、あえて一番の目玉となる機能を挙げるとすれば、それは何でしょうか。あらためてお聞かせください。

スティーブ

一番という意味ではやはり「IBM Db2 Mirror for i(5770-DBM)」で、お客様のシステムに継続的な可用性を提供します。加えてセキュリティーやシステム・マネジメントの機能も強化しています。

 

――私どもの感覚からすると、IBM Db2 Mirror for iはかなり大規模なシステムを所有しているお客様を想定しているようにも思えます。どういった背景から、この機能を実装することにしたのでしょうか。

スティーブ

おっしゃるとおり、IBM i にとって最大手のユーザーである金融機関やヘルスケアなどのお客様から継続的な可用性を担保してほしい、さらに言えばダウンタイムをゼロにしてほしいという強いご要望を受けていたのは事実です。

ただ、IBM i のユーザー・コミュニティーには大企業のみならず、中小規模の企業も数多く参加しており、すべてのメンバーが同様に継続的な可用性を求めています。決して大規模のシステムだけに限ったニーズではないのです。特に日本やヨーロッパなど、中堅・中小規模の企業が産業の中で重要な役割を果たしているマーケットにおいて、非常に重要なファクターになると考えています。

そこで、よりシンプルな構成でIBM Db2 Mirror for iをご利用いただけるよう、さらなる改善を図っていきます。現時点ではIBM Db2 Mirror for iを利用するためには外付けのSANストレージが必須となりますが、いずれは内蔵型のストレージもサポートする予定です。

 

――IBM i 7.4では、OSS(オープンソース・ソフトウェア)のサポートの幅も広がったと伺いました。

スティーブ

たまたま発表のタイミングが重なったのですが、厳密にはIBM i 7.4のリリースとOSSのサポート拡大は別の話です。つまりIBM i 7.4に限らず、たとえばIBM i 7.3 TR6などIBM i 全般でOSSの利用の幅が広がります。

ケヴィン

とはいえIBM i 7.4を機に、Yum/RPMとRのサポートが大きくフォーカスされているのも確かです。Yumについてはすでに2018年からサポートを行っていますが、今回のメジャー・リリースからIBM i の従来のライセンス体系(5733-OPS)によらず、RPMとYumでオープンソースパッケージの導入管理が提供されるようになりました。例えば新たにサポートされたRには、5733-OPSでのリリースを待たずにYum経由で最新アップデートを利用できるようになりました。

 

 

ビジネスの根幹に位置する重要なIP(知的財産)の多くが
レガシー・システムに組み込まれている

スティーブ・ウィル氏

――――今回のNEXT 2019でのお二人の講演を拝聴すると、共に「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というキーワードを強く打ち出しているのが印象的でした。
実は日本でも2018年に経済産業省から「2025年の崖」と題するDXレポートが発表され、あらゆる業界に衝撃を与えました。IBM i 経済産業省は、そのレポ―トの結論として「長年稼働しているレガシー・システムは捨ててクラウドへ移行すべき」と示唆していますが、ぜひスティーブさんのお考えをお聞かせいただければと思います。

スティーブ

端的に答えるなら、IBM i を単純にレガシー・システムと捉えるのは間違いです。そもそもIBM i というオペレーティング・システムは、お客様が利用するテクノロジーの進化にあわせて継続的に投資を行い成長させていける、そんなアーキテクチャーで設計されているのです。崖が迫ったときに発生するさまざまな問題に対処できるように、運用を柔軟に見直すことができる仕組みも実装しています。

仮にレガシーとされるシステムの大半がRPGのコードで開発されているならば、OSSのテクノロジーを活用してRPGベースのアプリケーションをモダナイズ(近代化)し、使い勝手を改善することが可能です。

 

――崖が見えたとしても、そこから落ちないようにする方法はいくらでもある、ということですね。

スティーブ

そうです。過去の投資を無駄にしない技術サポートに関して、IBM i は2030年を超えたロードマップを発表しており、今後も安心してIBM i を使い続けていただくためのコミットメントを提示しています。

また、オンプレミスでのシステム・マネジメントの煩雑さから脱却したいと考えるお客様もおられると思いますが、そんな場合もさまざまなベンダーやサービス・プロバイダーとのパートナシップに基づき、IBM i の環境をクラウドから提供することが可能です。

ただし、クラウドに移行すること自体で崖を乗り越えられるかどうかは別問題ですので、そこは注意しなければなりません。

 

――どんなことに留意する必要があるのでしょうか。

スティーブ

たとえクラウドに移行したとしても、そのシステムを将来にわたって支えていくオペレーティング・システムは依然として必要です。まさにそれこそが、IBM i が提供し続けている普遍的な価値なのです。

近視眼的な判断でレガシー・システムを捨て去り、まったく新しいプラットフォームに移行することには、非常に大きなリスクが伴います。ビジネスの根幹に位置する重要なIP(知的財産)の多くがレガシー・システムに組み込まれており、単純に移すことはできないからです。そうしたIPを含めたデジタル・リプレースメントを確実に成し遂げる必要があり、それがすなわちDXです。

 

――DXという言葉の概念をしっかり理解した上で、レガシー・システムをどうするのかを考えないといけませんね。

ケヴィン

もう少し補足させていただくと、DXはIBMが長年提唱してきたプラットフォームのモダナイゼーションの延長線上にあるとも言えます。

オペレーティング・システムの周辺ではPHP、Webイネーブルメント、モバイルといったテクノロジーが広がっており、近年ではIoTや機械学習、量子コンピューティングなども注目されています。そうした中でIBM i がOSSのサポートを拡大してきた理由も、これまで投資してきたプラットフォームから離れなくても、その上で新たなテクノロジーを実装し、モダナイゼーションを実現することにあります。

スティーブ

日本市場の最大の特徴は、IBM i で新しいことを実現したいと希望するお客様が多い点です。IBM i は、日本のお客様に背中を押されて進化してきたと言っても過言ではありません。私はほぼ毎年日本を訪れていますが、日本のお客様は、常にシステムのモダナイゼーションについて議論しています。オープンソースを盛り込んだことも、データ解析の機能強化も、IBM Db2 Web Query for iの開発も、元はと言えば、すべて日本からの要望が発端となってきました。

その結果、私たちは日本のお客様に励まされているという感覚を持つに至っています。IBM i で新しい機能を実現するたびに、日本のお客様に歓迎されていると感じます。

 

 

企業がビジネスのコアとして必要とする
新たなテクノロジーをIBM i に実装していく

ケヴィン・アドラー氏

――そうするとIBM i におけるOSSのサポートは、今後どのような方向で拡大していくのでしょうか。これまではPHPやNode.jsなど、どちらからといえば開発言語系のサポート拡大に比重が置かれており、一方でOSS系のデータベースのサポートはあまり進んでいなかったように思います。

スティーブ

たしかにご指摘のような側面もあり、今後はOSS系のデータベースについてもサポートの幅も広げるべく取り組みを進めています。

具体的にはOSS系データベースとIBM Db2 for iを相互接続する仕組みを提供することで、双方の資産をIBM i 上で活用できるようにします。アプリケーション固有のデータ管理をOSS系データベースで行い、より強固なセキュリティーやパフォーマンスが求められる基幹システムやCRM(顧客管理システム)など、全社的なデータ管理はIBM Db2 for iを利用し、連携させるというイメージです。

たとえばREST APIを生成するLoopBackの機能は、すでにIBM i のNode.jsでサポートされていますが、これをJSONにも広げるべく投資を行っています。さらにMySQLのほか、商用データベースのMicrosoft SQL ServerやOracle Databaseなども同様のLoopBackをサポートしているため、IBM Db2 for iとの接続が可能です。

 

――AI(人工知能)のコア技術である機械学習や深層学習についても、IBM i 上でのサポートの幅は広がっていくのでしょうか。

ケヴィン

おっしゃるとおり機械学習や深層学習は非常に大きな成長領域と捉えており、特にPythonに関してはNumPyやPandasといったライブラリも含めてサポートを強化しています。

スティーブ

こうしたOSSの取り組みからも見て取れるように、ビジネスで必要とする新たなテクノロジーを、IBM i 上にタイムリーに実装していこうとしています。

 

――なるほど。その意味では従来の堅牢な基幹システムとOSSの組み合わせによって、IBM i をベースとする1台のプラットフォーム上でDXの取り組みを推進していくことが可能となりますか。

スティーブ

そのとおりです。そう考えていただいて間違いありません。

 

――最後に、今後のITトレンドを見据えた取り組みについてお聞かせいただければと思います。世の中ではコンテナをベースしたクラウド活用のあり方が注目されており、IBMもオープンなDockerコンテナを活用したマルチクラウド戦略を推進しています。IBM i はこの動きに対して、どのように歩調を合わせていくのでしょうか。

スティーブ

コンテナは仕様がばらばら、あるいは変化の激しいプラットフォームを利用する際に有益なテクノロジーであり、クラウドには最適の環境と言えます。

そこには大きく2つのポイントがあります。いかにしてそこで展開されるサービスを管理するのか、そのサービスとのやり取りをどうやって実現するのかです。

先に述べたようにIBM i はクラウドからも提供されています。このためLinuxベースのコンテナを利用するのと同じような感覚で、IBM i を介して多様なサービスをクラウドに展開することが可能です。加えてコンテナを管理するのと同様の手軽さで、IBM i 上のサービスも一元管理できる仕組みを提供すべく投資を行ってきました。お客様にとってLinuxベースのコンテナを使いたいわけではなく、目的はあくまでも必要なサービスを利用することにあります。コンテナであろうがIBM i であろうが関係なく、必要なサービスを同じように管理し、利用できる。そんな環境を実現しようとしています。

 

――IBM i がDX実現を支えるプラットフォームとして進化を続けていることがよくわかりました。本日は示唆に富むお話をありがとうございました。

 

 


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