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2023.08.01
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【ロング・インタビュー】Db2 for iに地理空間機能を追加、
新規ビジネスも好調!IBM i を中心に据えたDXを強力に推進

【ロング・インタビュー】Db2 for iに地理空間機能を追加、<br />新規ビジネスも好調!IBM i を中心に据えたDXを強力に推進
新規ビジネスも好調、順調に推移するIBM iビジネス。IBM Watson機能を統合した地理空間分析機能の提供も開始し、IBM iを中心に据えたDXを後押ししていく
iWorldでは2023年2月にIBM Power事業部長の原寛世氏のロング・インタビュー記事を掲載しましたが、それから半年が経過した今、ふたたびインタビューを行いました。6月21日に35周年を迎えたIBM iのビジネスおよび4つのフォーカス・エリアの状況はどうなっているのか。さらに、お客様のITシステムのモダナイゼーション対応から新規ビジネスへの意気込みまで、あらためて幅広いお話を伺いました。

コロナ禍からのV字回復を経て好調を持続するIBM iビジネス

――原様には2023年1月以来、約半年ぶりのインタビューとなります。その後、2023年上半期のIBM iビジネスの状況はいかがでしょうか。

総じて述べると非常に好調です。この上半期は売上予算を達成し、通年でも目標を達成できる見込みです。
マーケットの盛り上がりも強く感じています。周知のとおりIBM iはこの6月21日に35周年を迎え、これを記念するオンラインイベントがアジアパシフィックを皮切りに、ヨーロッパ、北米の世界3カ所で開催され、お客様やパートナー、ISVの皆様と共に祝うことができました。「IBM iの優れた特長を永続的に伸ばしてほしい」というお言葉も数多くいただき、IBM iがいかに多くの皆様に愛され、支えられているのか、あらためて実感した次第です。そうしたご期待にお応えすべくIBMでは、IBM iとAI(IBM Watson)機能の今まで以上にスムーズな連携など新たなアナウンスも行っています。もちろんIBM Power事業部としても、IBM iを基盤とした戦略的なデータ活用など、お客様の取り組みをこれまで以上に力強く後押ししていく所存です。

――前回のインタビューでは、「CORE Business」「Banking and Industry Modernization」「Power as a Service」「SAP S/4HANA」の4つをフォーカス・エリアとした施策を実施していくというお話も伺いました。こちらの進展についてもお聞かせください。

4つのフォーカス・エリアはグローバル共通の目標であり、IBM Power事業もそれぞれの領域でしっかりリーダーシップを発揮することで、日本の存在感を大きく示せていると自負しています。
特にCORE Businessの領域では、IBM Power 10搭載サーバーを中心とした新しい提案が根付いており、販売パートナーのビジネスも、私たち直販のビジネスも、IBM Power 9からのシフトを進めることができました。
またPower as a Serviceの領域でもPower Virtual Serverを中心として、日本市場でも非常に良いスタートダッシュを決めることができました。たとえばPower Virtual Serverを開発環境に用いたレファレンスケースもすでにいくつか登場しています。

突然行われた価格改定の背景

――ただ、このCORE Business(オンプレミス)とPower as a Service(クラウド)の2つの領域を比較した場合、現状ではまだビジネス規模としてはオンプレミスのほうが大きいのが実態でしょうか。

もちろんオンプレミスのほうが圧倒的に大きいです。

――そんな中、この6月22日付で突然IBM Power製品の価格改定が発表され、IBM Power 10搭載サーバーもその対象となりました。もともと従来よりも高額な印象のIBM Power 10搭載サーバーがさらに値上げになるということで、好調を続けるIBM iビジネスの逆風ともなりかねません。率直なところ私ども販売パートナーの間にも衝撃が走ったのですが、今回の価格改定の背景についても伺ってよろしいでしょうか。

これに関しては「オンプレミスの価格を上げることで、クラウド移行を促していく戦略なのか?」というご質問をいただくこともありますが、決してそのような考え方を持っているわけではありません。
実のところこれまでIBM Power製品は、為替レートの変動を価格に反映してきませんでした。2022年春と秋にも一部製品の値上げの発表が行われましたが、これはあくまでも原材料費の高騰を受けた価格調整です。これに対して今回の価格改定は、「四半期単位での為替レートの変動ならびにサプライチェーンのコストや部品価格の上昇などによる製品コストの変化によって価格改定を行う」とするグローバルの新しいルールに基づくものとなります。
そうなると今後は、3カ月に1度のペースで価格が上がっていくのかとお考えになるかもしれませんが、ご心配には及びません。私も自らしっかり確認したのですが、「為替レートや原材料費が下がれば、次の四半期に即刻値下げを行う」方針です。 たしかに短サイクルでの価格テーブルの変更となり、ご迷惑をおかけするケースもあるかもしれませんが、「グローバル市場の動向にあわせ、常にリーズナブルな価格で製品をお届けしていく」というIBMの姿勢を、ぜひ前向きに受け止めていただければ幸甚です。

――あらためて考えてみればIBM ソフトウェアやPowerVSなどでは、従来から為替レートの変動を反映した料金改定が定期的にペースで行われてきました。その意味ではオンプレミスであっても、クラウドであっても、「必要なリソースを、より実勢価格に即した形で提供していく」というIBMの意思の徹底と捉えることができそうです。

ありがとうございます。Power as a Serviceについて加えて述べさせていただくと、パブリッククラウドとしてのPower Virtual Serverの利用のみならず、多くのパートナーの皆様が提供するクラウド経由の利用に関しても増加傾向が示されています。
一方で、クラウドでの運用よりお客様サイトでの運用が適しているという需要もあり、クラウドの利便性をオンプレミスでも適用できるように、IBM i サブスクリプション・ライセンスを提供開始しています。当初はP05のモデルに限定していましたが、現在はすべてのモデルでご利用いただけるよう拡張しました。また、ハードウェアもセットにしたIBM i システム・サブスクリプションもP05ユーザー向けに用意しました。新しいテクノロジーを新しいマシンで利用いただきやすくする、無駄な投資のないas a serviceモデルとなります。IBM Power製品ではお客様のニーズに合わせた適材適所な環境を選択することが可能です。

IBM iにIBM Watson機能を統合した地理空間分析機能

――Banking and Industry Modernizationの領域における新たな動きについても、ぜひお話を伺いたく思います。私も先般のIBM i World 2023を拝聴させていただき、非常に興味深い多くの情報を得ることができました。なかでもIBMとしての強い意気込みを感じた話題の1つが、IBM Watson機能を統合したIBM iによる地理空間分析機能(Geospatial Analytics)です。これは端的に言えば、IBM iにAI機能が加わる仕組みとなるのでしょうか。

イメージとしてはそうなります。地理空間機能は具体的にはIBM Db2 for iに組み込まれており、IBM i ユーザーはSQLを使用し、追加コストをかけることなく簡単にIBM Watson地理空間テクノロジーを利用することができます。
地理空間情報は既存のデータベースと組み合わせて、サービスを提供するエリアの選択など、企業のさまざまな意思決定に役立ちます。たとえばレストラン・チェーンの経営者が新たな店舗を展開する際の最適な場所の決定、災害発生のリスク情報を考慮した特定地域における保険商品の価格設定、自治体における災害発生時の避難所の開設や避難経路の策定といったユースケースが考えられています。

――単なる業務効率化だけにとどまらない、新しい発見や洞察を促すデータ活用を地理空間分析機能が実現していくのですね。
一方でIBM i Merlinの状況はいかがでしょうか。新しい動きが、なかなか耳に入ってこない気もしています。

IBM i Merlinは、デバッガー機能を追加実装し、IDE、変更履歴管理、CI/CD、アプリとDBの見える化、APIサービスの作成支援機能、そしてRPGⅣからFFRPGへの変換機能まで幅広い機能をブラウザーベースのGUIで提供しています。あまりにも機能が広範なため、お客様だけでなくIBMビジネス・パートナー様含めご理解いただくのに時間を要しておりますが、この春にはグローバルチームの全面的なサポートを受けて、すでにIBM i Merlin採用に手を挙げていただいているビジネス・パートナー様やSIer様向けに4日間にわたる勉強会も開催しました。ご参加いただいた方々からは、その強力さに高いご評価をいただいています。また、IBM iの開発環境としては、従来からのADTSとRational Developer for i (RDi)に加え、Visual Studio Code for IBM iといった新しいツールも続々と登場しています。そうした中、最新のコンテナプラットフォームであるRed Hat OpenShift上で稼働するIBM iのDevOps環境として、IBM i Merlinに対する期待はますます高まるところであり、IBM Power事業部として注力していきますので、引き続きご期待ください。

国産汎用機からIBM iへの移行ビジネスが拡大

――さらに踏み込んで、新規ビジネスについての意気込みをお聞かせください。国産汎用機が相次いでサービスを終了している今、あらためてIBM i への移行ビジネスが注目を集めているといわれています。国産汎用機ユーザーはどのような点を評価し、IBM i を選択しているのでしょうか。またそういった新規ビジネスをより推進するためにIBMとして取られている施策や体制などはございますか。

おっしゃるとおりIBMのコンサルタントには国産汎用機をお使いのお客様からの相談が多く寄せられており、IBM Power事業部もこの動きとしっかり連携をとっています。
そうした中で、COBOLで開発された現行の業務アプリケーションをほぼそのまま稼働できるだけでなく、データベースや運用スタイルまでを含めて移行できるメリットからIBM iを選択するケースが数多く見られます。COBOLコンバージョンで多くの実績を重ねてきた安心感も評価されているようです。加えてIBM iの持つパフォーマンスや可用性、DXやモダナイゼーションへの拡張性、安全性、セキュリティー対応といった強みが、お客様の選択につながっていると自負しています。

――たしかにCOBOLコンバージョンは大きな課題となります。

これはとりわけ重要なポイントですので、さらに補足させていただきます。
レガシー・アプリケーションの移行というと、COBOLのままのリホストや他言語へのリライトなど、既存のソースコードをどうするのかに目が向きがちですが、実際のアプリケーションの本番環境はプログラムとデータベース/データファイル、運用の3つの要素で成り立っています。このすべての要素がつつがなく移行できて、はじめてコンバージョンは成功と言えるのです。その観点からもIBM iは、非常に移行がしやすいプラットフォームであると私たちは強く訴求しています。
なお、レガシー・アプリケーションを他プラットフォームに移行しても、通常の基幹業務はインプットからプロセス、アウトプットに至る流れが変わるわけではありません。逆に変わったとしたら、業務に甚大な影響を与えてしまいます。このようにROI(投資対効果)をほとんど見出すことのできないシステムの移行に多大なコストや工数、リスクをかけるのは無意味です。いかに低リスクかつスムーズに、お客様の重要な基幹アプリケーション資産を移行できるかが重要であり、まずその点からIBM iは高いご評価をいただいています。
その上でIBM iは既存のシステムやデータベースを継承しつつ、新たなアプリケーションを低コスト・短期間・低リスクで開発できる機能をOS自体に実装しているため、企業は新たなデジタル戦略に向けた次の一手を打ちやすくなります。
たとえばREST APIを利用してILE COBOLやILE RPGで記述されたアプリケーションを外部から呼び出し可能なサービスへと転換し、UI/UXをモダナイズする取り組みも行われており、IBM iを中心に据えた“摩擦レス”な次世代継承によるDXが可能となります。

――なるほど。前回も伺いしましたが、IBM iは長期間にわたるロードマップが提示されていることも安心です。

2022年に発表したIBM i 7.5は2030年までのサポートを予定していますが、続いて2025年に発表を予定しているIBM i Nextは2033年まで、さらに2028年に発表予定のIBM i Next+1は2035年まで、IBM i Next+2は2037年を超えた先まで、、と、IBM i 7.5とあわせて4世代にわたるロードマップを公表しています。もちろん2038年で終了するという意味ではなく、その先に向けての技術開発もすでに着手しており、お客様は安心してIBM i を使い続けていただくことができます。

――他プラットフォームから移ってこられた方もこの先も長く安心してお使いいただける。さらに地理空間分析といったAI機能やAPI連携など、時代に合った拡張も行える最強のシステムというわけですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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