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2021.07.26
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Z世代のIBM i活用法
~API連携が分断されたレガシー資産を救う~

Z世代のIBM i活用法<br> ~API連携が分断されたレガシー資産を救う~
Z世代のIBM i活用法<br /> ~API連携が分断されたレガシー資産を救う~

実績のあるレガシーシステムは決して負の遺産ではなく、企業にとって何物にも代えがたい貴重な資産にほかなりません。その価値が改めて見直され、活用法が再検討される時代となりました。オンプレミスと様々なクラウドサービスがリアルタイムに連携するハイブリッド・クラウド環境において、レガシー資産のポテンシャルを最大限に引き出すことが、“適材適所”の選択肢を広げていくことにつながります。ではどうすればレガシー資産を活かすことができるのか、株式会社オムニサイエンスの下野皓平氏に聞きました。

※株式会社オムニサイエンスは2024年3月29日に社名を株式会社MONO-X(モノエックス)に変更しました。

レガシーシステムのネガティブイメージ
その背景にある「技術者の分断」と「システムの分断」

これまでDXに対して、多くの人がその取り組みをレガシーシステムの刷新と捉えてきました。しかし、そこに大きな誤解があります。
もちろん、既存システムが昨今のビジネス環境の変化に対応しきれなくなったならば変更を加える必要があり、ITがDXにおける重要な要素であることにも変わりありません。ただし、DX本来の目的はシステムではなく、ビジネスモデルや業務のあり方、従業員の働き方など、企業を根本から変えていくことにあります。
2020年末に経済産業省から公表された「DXレポート2」の中間とりまとめも、この誤解を払拭すべく、DXの本質は企業文化の変革にあることを、あらためて強く訴える内容となっています。
そうした中で「Legacy with DX」というキャッチフレーズを打ち出したのが、IBM i市場で30年以上の実績をもつソフトウェア開発ベンダーの株式会社オムニサイエンスです。そこにはどんな思いが込められているのでしょうか。
オムニサイエンス 取締役 COOの下野皓平氏は、このように話します。
「レガシーという言葉は、本来は『過去に作られた価値のある』文化や仕組み、功績といった意味を持っています。それにもかかわらず、なぜ日本ではレガシーシステムをネガティブなイメージで捉えられてしまうのでしょうか。背景には『技術者の分断』と『システムの分断』という2つの分断があると考えています。その結果として、次第にレガシーシステムをうまく使いこなせなくなっていき、時代遅れのもの、負の遺産というネガティブなイメージが定着してしまいました。この分断を解消できているかどうか、そして次の世代も自然な形でレガシーシステムを活かしていく文化が醸成されているかどうか、これによってDXを着実に推進していく企業と、停滞する企業の格差が生じています」
実際、レガシーシステムを刷新することが目的化してしまった企業は、新たな価値をほとんど生み出せないままDXへの取り組みが頓挫してしまいかねません。
例えば数十年前からまったくロジックの変わらない在庫引当のプログラムを、多大なコストと工数をかけて最新の言語で作り直したとしても、業務が効率化することはなく、担当者の働き方を変えることもできません。
こうしたことを考えたとき、むしろDXにとって重要なことは、今でも通用するレガシー資産をいかに継承し、活用していくかにあると言えます。

DX 推進時の最適解を選択するための3つのポイント

特にIBM i上では、これまで各企業が長年にわたって投資を積み重ねてきた貴重な資産が運用されています。まずは「①レガシー資産を最大限に活用する」ことを前提とし、その上で「②SaaSやPaaSなどで提供されている様々な最新テクノロジーをスムーズに取り入れ、ハイブリッド・クラウド環境で運用」していくことが基本戦略となります。さらにこの取り組みは、「③できるだけ外部に依存することなく内製で進める」ことが重要です。 「この3つの条件が揃って満たされて、はじめて企業はDX 推進において最適解を選択することが可能となります」と下野氏は強調します。そのためにも「技術者の分断」と「システムの分断」の解消が求められることになるのです。
具体的にどんな企業が、上記のようなDX推進を実践できているのでしょうか。典型的な姿として見られるのは「新しいユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンスをIBM iに上手く順応させている企業」です。下野氏は大手小売業から個人商店まで幅広く商品を供給している、次のような中堅卸業の取り組みを紹介します。

この卸業は20年以上にわたって基幹システムをIBM i上で稼働させてきましたが、個人商店との受発注のやりとりは、いまだに紙やファックスに頼っていました。大手顧客と同様にオンライン化できれば、よりスピーディーに注文に対応することが可能となるのですが、個人商店にとってはそれだけのためにパソコンを導入することはできず、システムの操作を覚えることも困難で、なかなか実現には至りませんでした。
そこでこの卸業が選択したのが、IBM i上の基幹システムと連携してスマホ上で簡単に操作できる、LINEのチャットボットを用いたユーザーインターフェースを提供するという方法です。これなら個人商店にとっても新たな設備投資は必要なく、日常生活で家族や友達とメッセージを交わしているのとほぼ同じ感覚で、必要な商品をいつでも、どこからでも発注できるようになります。新たなITスキルを習得する必要はありません。
さらにLINEのチャットボットなら、例えば注文を受けた商品の納品日が確定した時点で今度はIBM i 側から即座にプッシュ通知で顧客に知らせることも可能です。
「レガシーという位置づけにあったIBM i上の基幹システムと、モダンなLINEのチャットボット。これまで“別物”と考えられてきたこの2つのプラットフォームを有機的に連携させるというアプローチによって『システムの分断』を解消することで、この卸業は紙に依存した煩雑な業務処理を改善するとともに、顧客満足度も向上するという大きな成果を得ることができました」と下野氏は話します。

レガシー資産とクラウドを連携させるAPI-Bridgeによる課題解決

上述のケースのようなIBM i上のレガシーシステムとクラウド(Web)系アプリケーションの連携は、実は現在では簡単に行うことができます。これを実現したのが、オムニサイエンスが提供している「API-Bridge」という仕組みです。
もちろんこれまでも、IBM i上のレガシーシステムとWeb系アプリケーションをAPI連携させるという取り組みがなかったわけではありません。しかし、新サービスを担当するWeb系の開発者は IBM iに関する知識がなく、一方でIBM i系の開発者はWeb系の技術に精通していないのが実情で、相互の会話が成り立ちませんでした。
そもそもIBM i上で稼働しているRPGで開発されたアプリケーションをAPI化するためには、まずYumで環境を整えた上で、Node.jsでプログラムを書き直すといった作業が発生します。API-Bridgeは、こうした高度なスキルが要求される部分を隠蔽し、よりシンプルな形のAPI連携をサポートすることで、「技術者の分断」を解消するのです。
オムニサイエンス IBM i DX事業部開発部の加邉 真也氏は、「API-Bridgeでは、Webの標準インターフェースにIBM iを対応させ、URLでパラメーターを受け渡すという方法を採用しています。また、IBM i上で運用しているロジックから外部APIで実行することも可能です」とデモを通じて説明します。
具体的にはAPI-Bridgeを用いたAPI連携には、次の2つのパターンが用意されています。

1つは、「IBM iをAPIサーバー化する」という方法です。IBM i上で運用してデータやロジック(顧客マスター、受発注プログラムなど)を公開し、kintoneやSalesforce、LINEなどのSaaSアプリ、自社開発アプリ、スマートフォンやタブレットなどのモバイル・エッジから呼び出して利用することができます。これによりWeb系の技術者は、バックエンドに工数を割くことなくフロントエンドの開発に専念できるようになります。

もう1つは、「IBM iから外部APIを実行する」という方法です。これならIBM i系の技術者も、RPGのスキルだけで社内の様々なAPI サーバーからデータを取得する仕組みを構築することができます。また、パブリックに公開されている天気APIやリスク情報API、サードパーティが構築した与信APIや取引先在庫APIなど、社外のAPIエコノミーとインターネット経由で連携してデータを馴染みの物理ファイルに取り込むことも可能です。

またこのAPI-Bridgeは国産、自社開発ゆえにスピード感をもってお客様のご要望にお応えすることが可能なのが大きなメリットだと、下野氏は力説します。「日本のIBM iユーザーをペルソナとして開発しているので、日本人向けの製品UI、そしてLINEやKintoneなどの日本固有のUIに対応することも簡単です。」

なお、API-Bridgeは月額3万円からのサブスクリプションで手軽に導入できることも、IBM iの資産を有効活用したいと考える企業にとって大きなメリットとなっています。新しいDXの試みに際し、いきなり高額なライセンスを買い取るのではなく、チャレンジする中での「まずやってみる」を支えるライセンス体系ともいえます。

IBM iの優位性が改めて注目され、活かされる時代へ

「システムの分断」と「技術者の分断」の解消が進むに従い、「IBM iの優位性が改めて注目され、活かされる時代になると考えています」と下野氏は話します。 実際、顧客により良いエクスペリエンス(体験)を提供すべく、フロントエンドにおいて様々なテクノロジーの活用にチャレンジしている企業ほど、むしろバックエンドはIBM iが最適だという判断に傾き始めているようです。
長年にわたり基幹システムを運用してきたIBM iを、引き続きバックエンドの中心基盤とすることで、データの分散を防いで一元管理が可能となるからです。オンプレミスと様々なクラウドサービスのリアルタイム連携が当たり前となる中で、これはデータマネジメントにおける最重要ポイントといって過言ではありません。IBM iは安定性とパフォーマンスの両面からの圧倒的な信頼で、この要件に応えてくれます。
「繰り返しますが、企業文化の変革を目指した真のDXを推進していく上では、『システムの分断』と『技術者の分断』という2つの課題を解決することが第一歩となります。IBM iにはそのための道具立てが整っているので、あとは皆様の取り組み次第です。フロントエンドの様々なSaaSサービスの進化にスピード感を持って取り込むことで、自社アプリをモダナイズして拡充することができます。弊社はAPI-Bridgeを通じてその裏側を支えるお手伝いをしてまいりたいと考えています。もともとプラットフォームにIBM iを選択していたということは、先見の明があったということにほかなりません。ぜひIBM iが持つポテンシャルを最大限に引き出し、活用していただきたいと思います」と下野氏はエールを送るとともに、オムニサイエンスとしてもその取り組みを一貫して支援していくという姿勢を示しています。

<株式会社オムニサイエンス 加邉真也氏と下野皓平氏>

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