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2023.09.01
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PowerVS 構築の世界 第1回

PowerVS 構築の世界 第1回
PowerVS 構築の世界
株式会社アルファー・コミュニケーションズ

1. 最近のIBM Power Systems Virtual Server

この記事はIBM Power Systems Virtual Server(以降PowerVS)のIBM iにフォーカスした記事となっております。

PowerVSが提供され約4年が経ちました、弊社ではサービス提供後、早々に検証チームを立ちあげてPowerVSの可能性を探ってきました。検証当初、日本のリージョンでの提供はなく、アメリカ(ダラス)を使って検証していました。
現在、日本では東京リージョン、大阪リージョンでPowerVSが提供され、ネットワーク接続方式も複数のパターンが確立され、VTLやVPNのといったコンポーネントも追加されました。当初の状況を知る身としては数年で大きく進化を遂げていると実感しています。
この進化に合わせてお客様の声も少しずつ変わってきたと感じます。当初はメーカー提供のクラウドという事もあり興味本位で金額感が知りたいという声や本番環境での利用は不安なので開発や災対用で利用するといった声も少なくなく、まだまだ様子見といった声が多かったと感じておりました。
しかし、ここ数年では複数のネットワーク接続パターンが確立され、PowerVSへ移行した事例や利用実績を聞く事が多くなってきたからか、本番利用を想定した作業依頼が増えてきたように思います。実際に弊社で構築した案件もここ1年で見ると本番環境での利用が多く、現在構築中の案件も本番環境での利用がほとんどです。
この記事ではPowerVS IBM iの構築に携わってきた弊社がPowerVSを検討する上で大事なポイントや構築に携わって知った事などを3回に分けて記載していこうと思います。弊社もPowerVSの構築に携わった期間としては、数年でまだまだ未知の部分も多いのですが、現在PowerVSを検討中、これから検討したいというIBM iユーザー様や実際に構築を担当するエンジニアの方のお役に立つ記事となれば幸いです。

2. 構成時の検討ポイント

PowerVSを検討する上で重要なポイントとして、「ネットワーク構成」「バックアップ方式」「データ移行手段」この3つをどうするかを事前に検討する事が重要です。その他にも重要なポイントはありますが、今回はこの3つのポイントを紹介していきます。
ここで紹介する「バックアップ方式」「データ移行手段」はIBM iにフォーカスした内容となっております。

2-1. ネットワーク構成

クラウドですから当然考えなければいけないネットワーク問題。しかもPowerVSはIBM Cloudのコロケーションという位置づけであり、IBM CloudのVPCやClassic環境に直接繋ぐだけではダメで、そこから内部のCloud Connectを使ってPowerVSまでの経路を設定する必要があるといった点もPowerVSのネットワーク構成における複雑さの一つです。
複数ある接続パターンから、どの接続方式を選択すべきかを検討するのは難しい問題です。当初、PowerVSへ接続方法として紹介されていたのはClassicエリアにVRAを設置する方法でした。この接続方法はVRAの月額費用のインパクトが大きかった事もあり、後から確立されたネットワーク構成と月額費用で比較する方も多いのですが、自社にとってどの接続方式を選択するのが最適なのかを検討する事が最も重要です。
例えば、既に社内ネットワークの拠点間接続にキャリア閉域網を利用している場合は、ご利用中の閉域網にIBM Cloud接続オプションがあれば、親和性高くIBM Cloudへ接続する事が出来るので、まずはキャリア様にご相談頂くのがよいと思います。
インターネットVPN接続においては各拠点からIBM Cloudへ直接接続するのか、それとも単一の拠点にIBM Cloud接続経路を確立し、各拠点はそこを経由して接続するのかなど、現在の社内ネットワーク構成と照らし合わせながら既存ネットワーク構成への影響度や構成変更が大きく発生しないような構成を選択するといった点も検討の一つだと思います。
また、極端にトラフィックが少ない場合やPowerVSへ接続する端末も数台規模というお客様であればPowerVSの共有ゲートウェイであるVPNコンポーネント(VPNaaS)を検討するのもよいと思います。
上記とは違う観点となりますが、各ネットワーク構成における仕様や制約事項を把握する事も非常に重要です。IBM CloudのDocsには仕様や制約が記載してあります。IBM Cloud検討中のお客様は事前に確認する事をおすすめします。
例えばVRAを利用する場合、Classic環境に接続しますが、Classic環境では10.0.0.0/14、10.198.0.0/15、10.200.0.0/14、169.254.0.0/16、224.0.0.0/4といったアドレス帯を予約帯アドレスとして設定されており、これらのサブネットがオンプレミスで利用中のIPアドレスとの競合がないかを確認しなければいけません。また、Classic環境はVPCとは違いアドレスの持ち込みが出来ない仕様であり、予め決められた10.x.x.xのアドレス範囲からユーザー用サブネットが割り当てられる仕様であり、自由にサブネットやIPアドレスを設定する事が出来ません。こちらもオンプレミスとの競合がないかを確認し競合があった場合、NATなどで回避するといった事も検討する必要があります。
PowerVSのVPNaaSについてもいくつか制約があります。PowerVSでは10.0.0.0/14、10.200.0.0/14、10.198.0.0/15、10.254.0.0/16、といったアドレス帯を除き自由にサブネットを設定する事自体は可能です。しかしVPN設定においてピアサブネット(オンプレミスサブネット)を設定する際に、ここでも一部の10.x.x.xのアドレス帯を設定する事が出来ません。その為、オンプレミスで利用するアドレス帯に上記が含まれていないかを確認する必要があります。これらのサブネット制限はdocsにも記載があるのでご確認下さい。
結論から言うと、現状オンプレミスのサブネットで10.x.x.xのアドレス帯を利用しているお客様はIBM Cloudを検討する際は上記の仕様や制約事項を事前に把握する事が重要であると言えます。これらの内容も加味し、自社にとって何が最適なネットワーク接続パターンなのかをご検討下さい。

次回は構成時の検討ポイントの中でPowerVSでのバックアップ方式とデータ移行手段について書きたいと思います。

*株式会社アルファー・コミュニケーションズ

株式会社イグアスの100%子会社。
企業のDX/データ活用のニーズに対応すべく、業務と技術に精通したエンジニアが、新しい技術を取り入れながら、お客様を支援するクラウド・サービス事業と、IBM i(AS/400)の基幹および業務システムを中心に、お客様の業務効率の向上、経営・IT課題の解決をご支援し、システムの立案から導入、構築・アフターフォローまで一貫したサービスを提供するIBM i 関連事業の二つの柱でお客様のイノベーションに貢献するエンジニア集団。

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