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2022.09.02
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IBM i バックアップの自動化・時間最小化を実現
– Full System FlashCopy Toolkit (FSFC Toolkit) のご紹介 –

IBM i バックアップの自動化・時間最小化を実現<br>– Full System FlashCopy Toolkit (FSFC Toolkit) のご紹介 –
IBM i バックアップの自動化・時間最小化を実現 – Full System FlashCopy Toolkit (FSFC Toolkit) のご紹介 –

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジーサービス
サーバーソリューション
中村 陽一

IBM i ではデータのバックアップをテープ装置 (あるいはその他のデバイス) に取得するケースが多いかと思いますが、データ量が多い環境ではバックアップ取得に時間がかかり夜間バッチ処理に割り当てられる時間や朝のオンライン開放に間に合わなくなったりするケースも見受けられます。当記事ではバックアップに伴う業務停止時間を最小化できるソリューションであるFull System FlashCopy Toolkit (FSFC Toolkit) をご紹介したいと思います。FSFC ToolkitはIBM i の故郷・開発拠点である米国ロチェスターのテクノロジーサービス (旧称システムズラボサービス) 部門が提供する有償アセットで、日本でもご購入・ご利用頂けます。

バックアップに伴う業務停止時間最小化としてはIBM i では以前より、

  1. 活動時保管機能の活用
  2. PowerHA SystemMirror for i FlashCopy機能の活用
という2つの方法などが知られています。

1の活動時保管機能はIBM i のOS標準機能で、図1のようにOSとしてバックアップ対象オブジェクトのチェックポイント・イメージを確立してバックアップを取得することで、バックアップ中でも業務アプリケーションによる更新ができるようにする機能です。こちらは対象オブジェクト数が増えるとその分チェックポイント・イメージの確立までに時間を要してしまうという特性があります。


▲図1. 活動時保管

2の方法は図2のように、IASP (独立ASP) と呼ばれるシステムASPとは別に構成するストレージ領域を外部ストレージのボリュームで構成、IASPのFlashCopyを作成して本番区画とは別のバックアップ取得区画にマウントしてデータ・バックアップを取得する方法です。ストレージ・レベルのチェックポイント・イメージ確立のため、対象オブジェクトが多くなっても、チェックポイント・イメージの確立までの時間は活動時保管と比べて短くできます。ただ、この方法は業務アプリケーションのデータなどバックアップ対象のデータをIASPに配置する必要があり、既存業務アプリケーションの実行環境設定の変更・調整が必要になってきます。


▲図2. PowerHA SystemMirror for i & FlashCopy

今回ご紹介するFSFC Toolkitも外部ストレージのFlashCopy機能を活用するソリューションになりますが、PowerHA SystemMirror for i とは違いIASPを構成する必要がありません。図3のように、システム全体のFlashCopyを作成してFlashCopy区画を起動し、そこからデータ・バックアップを取得する形式です (FSFC Toolkitがどのように動作するかは後述しておりますのでご参照ください。)。IASP対応が不要なため、現行の業務アプリケーションの実行環境に影響を与えることなくソリューションを提供できるのが大きなメリットになります。


▲図3. Full System FlashCopy Toolkit (FSFC Toolkit)

なお、本番区画を構成する全ボリューム・セットのFlashCopyを作成するため、FlashCopy区画はそのままでは全くのクローン状態で起動してきます。IPアドレスの重複、業務アプリ用サブシステムの起動と予期せぬバッチ処理実行など、FlashCopy区画の起動では本番区画の稼働状況に影響を与えないように細心の注意が必要になります。 FSFC Toolkitでは表4のように様々な項目でFlashCopy区画起動時の設定を行えるようになっており、安全な起動ができるようになっています。またBRMSとの連携機能も用意されていますので、日次バックアップ処理にFSFC Toolkitの機能を組み合わせ、自動化も行うことができるようになっています。


▲表1. FSFC Toolkitで設定可能な項目

FSFC Toolkitの動作には図4のように本番区画とそのFlashCopyで作成されたクローンのバックアップ取得区画の他に、FSFCの動き全体をコントロールする制御区画が1区画必要です。この制御区画でFSFC Toolkitの諸設定を行います。各区画のシステム前提条件をまとめたものが表2です。制御区画のOSも本番区画、バックアップ取得区画同様にIBM i となりますが、用途はFSFCのコントロールだけですので、制御区画へ割り振るシステム・リソースの推奨としては0.1コア以上 (Uncappedモード)、メモリー6GB以上と小さい区画で大丈夫です。図4では便宜上制御区画のディスクも外部ストレージに構成するように描いていますが、制御区画のディスクは内蔵ディスクでも構いません。またFSFC Toolkit制御区画はPowerHA SystemMirror for i クラスター・ノードとなります。そのため、制御区画向けにPowerHA SystemMirror for i Standardライセンスが必要となります (本番区画向け、バックアップ取得区画向けには不要です)。


▲図4. FSFC Toolkitでのシステム (区画) 構成


▲表2. FSFC Toolkitシステム前提条件

図4ではFSFC Toolkitによる処理の流れを1番から5番で簡単にまとめていますが、大きく以下のような流れになります。

  1. FSFC Toolkitによる処理が開始されると最初に本番区画においてメモリーに展開されているデータがディスク (外部ストレージのボリューム) に書き出される。
  2. ディスクへの書き出しが完了すると、外部ストレージで本番区画を構成する全ボリュームのFlashCopyが作成される。
  3. FlashCopyが完了すると、本番区画は業務再開可能となる。
  4. FlashCopyボリュームからバックアップ取得区画として起動する。
  5. 区画起動後、バックアップ取得区画ではテープ装置 (もしくはその他のデバイス) へのデータのバックアップ処理が実行される。
もう少し掘り下げてFSFC Toolkitを用いて日次バックアップの自動化を実装した場合のフローにまとめたのが図5となります。


▲図5. FSFC Toolkitを用いた日次バックアップの実装フロー例

日次バックアップ取得にあたって理想的な状態はFSFC ToolkitによるFlashCopy作成時点ではデータが静止状態であることです。明示的な静止状態を作り出すことでリカバリー・ポイントが明確にできます。そこで、実装フロー例では最初に業務アプリケーションの停止処理ロジックを組み入れています。 業務アプリケーション停止後、FSFC ToolkitのSTRFSFLASH (STaRt Full System FLASHcopy) コマンドでシステム全体のFlashCopyを作成します。FSFC制御区画は本番区画でのSTRFSFLASHコマンド実行を受けて、本番区画向けの全ボリュームのFlashCopyを作成するように外部ストレージ対してコマンドを発行します。
外部ストレージ側でのFlashCopy実行完了を制御区画のFSFC Toolkitが感知すると、本番区画にてFSFC Toolkitに予め実装しておいた業務アプリケーション再開処理を実行します。バックアップに伴う業務停止時間は図4中のENDSBSからSTRSBSまでの間ということですので、実際のバックアップ処理と比較して大変短くすることができます。

FSFC Toolkitは本番区画で業務アプリケーション再開処理を行うとともに、並行してバックアップ取得区画の起動、予め実装しておいた日次バックアップ処理を実行する形になります。これら一連全てFSFC Toolkitが制御・実行しますので、自動化運用が可能です。

FSFC ToolkitはIASP対応が不要なため、PowerHA SystemMirror for i でのFlashCopyと比較してよりスムーズに既存のお客様環境へ適用することができます。 また、FSFC Toolkit自体は米国生まれのアセットで、Toolkitの設定画面等は英語となっていますが、日本語環境でも問題なく稼働しますし、日本においてもご採用頂くお客様が増えてきております。IBM i で日々のバックアップ処理時間にお悩みをお持ちでしたらば、ぜひFSFC Toolkitをご検討頂けますと幸いです。

参考
IBM Support DocNo. 1119435: PowerHA Tools for IBM i – Full System FlashCopy
https://www.ibm.com/support/pages/node/1119435

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