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2020.12.02
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IBM iの「今」がわかる
- iEVO 2020基調講演概要レポート -

IBM iの「今」がわかる<br> - iEVO 2020基調講演概要レポート -

『IBM iの「今」が分かる』と題したオンライン・イベント「iEVO 2020 (i Evolutionの略)」が2020年11月12日から視聴可能になった。当ブログでは、「iEVO 2020」の数あるコンテンツの中から5つの基調講演をピックアップして、その概要についてのレポートをお届けする。

基調講演全般を視聴しての感想

5つの基調講演を視聴してみて、1つのセッションが約30分と昼休みに視聴するのにも適した長さであり、要点がコンパクトにまとめられていて理解し易いコンテンツになっていると感じた。IBM iの今と将来を理解する上でも、一度視聴されてみることをお勧めする。

また、iEVO 2020のセッションは本レポートにある基調講演の他にも、スポンサー企業によるWebCastが5トラック25セッション、その他にも注目ソリューションの資料ダウンロード、動画などが多数提供されており、2020年12月11日まで視聴可能なので是非下記のURLにアクセスしてみてほしい。

https://gateway.on24.com/wcc/eh/2762155/i-evolution-2020

【参考】
「iEVO 2020」WebCast5つのトラック(各56セッション)

  • 注目事例&DX最新情報
  • 事業継続
  • 自動化/効率化
  • モダナイゼーション
  • データ活用・AI

【1】『ITリーダーが取り組むニューノーマルとは』

日本アイ・ビー・エム株式会社 常務執行役員 伊藤昇氏

基調講演のトップを飾るのは、日本アイ・ビー・エム㈱の常務執行役員であり、クラウド事業を統括される伊藤昇氏による最新IT動向を総括する講演であり、各企業のITリーダー必聴の内容となっている。

IT環境の現状と動向

IBMが、今後主流になる領域として注目しているのは以下の5つである。

  • クラウド特にハイブリッドクラウド
    今後のIT環境の標準はクラウドであると予想しているが、完全なクラウドネイティブへの移行にはまだ時間が掛り、当面はハイブリッドクラウドがITの主流になるだろう。
  • DXの推進
    これまでDX推進の動きは緩慢なものであったが、2020年のコロナ禍によってDXの動きが一気に加速した。このモーメンタムはコロナ禍が収束した後も続くだろう。
  • AIの活用
    AIは未だに高い関心を集めているIT領域であり、次々と新しい活用例が見られるようになった。今後も更なる幅広い応用が期待される分野である。
  • オープン・プラットフォーム化
    IBMは、「一度アプリケーションを作ればどこのプラットフォーム上でも動く(Build once Deploy everywhere)」IT環境(オープン・プラットフォーム)を提供して行く。具体的には、Red Hat OpenShiftをベースにこれを推進して行く考えである。
  • エッジコンピューティング
    各末端のデバイスでのデータ処理に加え、5Gの高速通信技術を使い多くのデバイスからデータを素早く収集、分析することで企業活動に活用できる時代になる。

ITリーダーが取り組むニューノーマルのポイント

上記の様なこれからのIT環境を活かし、社会の変化に迅速に対応でき、いつでも、どこでも業務が行え、組織や業務を超えて連携できる仕組み作りをITで支えることが重要になる。

ニューノーマルを創造するITリーダーとは

今日ITリーダーに対する期待は大きく、テクノロジー・リーダーとしてビジネス部門を牽引することが求められている。ビジネス部門とIT部門の両方を理解した上で、テクノロジーをビジネスの成長にどう繋げるかを真剣に考えることが必要であり、そのためにオープンなテクノロジーだけでなく他業種を含め他社の事例を積極的に学ぶことが重要である。

また、新技術がもたらすビジネスチャンスおよびリスクを分りやすく経営層に伝え、提案を行い、その上で経営陣と共にビジネス部門や他企業と連携してITを活用した企業変革を推進する力がITリーダーには求められる。

【2】『IBM i is your Future』

IBM Co. Ltd, IBM iチーフアーキテクト、スティーブ・ウィル氏

基調講演の二番手は、過去のiSUCやNEXTでもおなじみのスティーブ・ウィル氏の登場だ。IBM i チーフアーキテクトとして思い描くIBM i の“未来”、そこに向けてのロードマップがわかりやすく解説されている。

IBM iの戦略

IBM iの歴史は1998年のAS/400の発表に遡る。それ以降IBM iは進化を続けているが、IBM iに関する決定はすべて以下の3つの戦略に基づいて行われてきている。

  • Power System上で動くソリューション・プラットフォーム
    「ソリューションを提供できること」がIBM iの第一の目標であり、そのために時代の要請に合わせて様々な技術を取り込んできた。
  • オープン・プラットフォーム
    IBM iは多くのオープンな技術をソリューションの中で使用し、管理できる。ソリューションを1つのサーバー内で完結させることも、IBM iと外部のクラウドサービスとを連携させて実現することも可能である。複数解をもてることの価値を理解してほしい。
  • インテグレーション
    新しく採用した技術をIBM iに統合することで、従来の技術と連携したソリューションの開発、運用、管理が容易になる。これがインテグレーションの意義・価値である。

IBM iのロードマップ

現在公表されているロードマップでは2030年代までのソフトウェア・サポートがコミットされている。このように、IBM iは長期に渡って安心して、長期計画的に基づいて使用できるプラットフォームである。

ユーザーの関心事に基づいた機能強化

IBMはユーザー調査の結果に基づく機能強化を行ってきており、最近は以下の分野の機能強化を実施している。

高可用性

IBM i 7.4では高可用性の要望に応え、IBM i Db2 Mirrorが導入された。当初とは違い、今では内臓ディスクだけを使用している比較的小規模なお客様でも使用できるように機能強化されている。これにより、多くのお客様に最先端の事業継続ソリューションを提供できるようになった。IBMはこの分野に継続的に投資を行う予定である。

また、高可用性という観点では、急激なワークロードの増減に柔軟に対応できるダイナミック・キャパシティ機能も忘れてはならない。これには、クラウドサービスで使われている技術が利用されている。

アプリケーション・モダナイゼーション

アプリケーションのモダナイゼーションは、モジュール化が鍵になる。モノリシックなコードからモジュールを抽出し、それらのモジュールを組み合わせてプログラムを組むことで、修正や拡張が容易かつ迅速に行えるようになる。また、モジュラー構造にすることで、既存アプリケーションとオープンソース言語によるプログラムとの連携処理も容易に行える。

さらに、統合開発環境のRDiにはこうした作業を支援する機能が備わっており、開発生産性を大幅に向上させることができる。

アプリケーションのクラウドへの移行

ほとんどのIBM iユーザーは自作アプリケーションを有しており、これらをハイブリッドクラウド環境に対応させるというニーズに直面する可能性が高い。この場合にもモジュラー構造のプログラムはその威力を発揮する。モジュールをRESTラッパーでカプセル化し、クラウドを介してそのモジュールをサービスとして使用できるからだ。

IBM iの将来に向けた投資

IBMはPowerプロセッサーの開発に投資をしてきたし、今後もこの投資は継続される。実際、2020年8月に最新のPower10が公開された。いずれPower10を搭載したPowerシステムを市場に投入する予定である。 また、IBM iの開発を将来に渡って継続的に行うために、Fresh Facesという施策を実施し、若い開発者達を積極的に雇用するという人材面の投資も併せて行っている。

【3】『IBM iが正解。デジタル変革を低コスト、短期間、低リスクで実現する方法』

日本アイ・ビー・エム株式会社 サーバー・システム事業部長 理事 黒川亮氏/IBM i統括部長 久野朗氏

前段のスティーブ・ウィル氏の講演を受け、次は日本アイ・ビー・エム㈱のPower Systemsの販売責任者達が、日本のユーザーにとってのIBM i を使い続けることの価値を解説する。

IBM iを取り巻く環境(黒川氏)

先行き不透明な時代と言われる現代、とりわけコロナ禍に見舞われた2020年はその感が強いが、そのような環境下においてIBM iは企業を支える最適なプラットフォームである。そのことは、日本を始めIBM iユーザーの多い国々で第3四半期のIBM iのビジネスが対前年同期の実績を上回っているという事実に現れている。この厳しい経営環境下でIBM iへの投資を決断していただけたのは、様々なIBM iの優位性をお客様が評価した結果と考えている。

IBM iの強み(久野氏)

単一レベル記憶アーキテクチャーとPowerプロセッサーの相乗効果による高速処理 IBM iの単一レベル記憶(SLS)アーキテクチャーにより、十分なメモリー容量があれば特別なコーディングなしにデータベースその他のオブジェクトをメモリー内に常駐化させられる。現代は大量のメモリーを搭載することがハードウェア的にもコスト的にも可能な時代であり、それによりデータアクセス速度が飛躍的に向上する。また、データ待ち時間が大幅に短縮されるので、Powerプロセッサーの処理能力をフルに活用することができ、パフォーマンスが大幅に向上する。 また、処理能力の向上により、パフォーマンスへの影響を気にせずIBM Db2 Web Queryを使い、Db2上のアクティブデータに対し分析処理を実行できるのもIBM iの強みである。

アプリケーション開発

IBM iは言語としてJava、PHP、Node.js、Python他、多くのオープンソース言語をサポートしており、これらの言語でアプリケーション開発を行いIBM i上で実行することができる。また、IBM iのデータベースであるDb2はもちろんのこと、PostgreSQLやMariaDBなどオープン系のデータベースを使用することもできるので、オープンソース言語を習ってきた新人を即戦力として活用できる。

IBM iインテグレーション

強力なセキュリティ

IBM iはDb2やセキュリティ機能がOSの機能の一部として統合されており、極めてセキュアなシステムである。その証拠として過去30年IBM iはハッキングされたことがない。

また権限付与の妥当性についても、各ユーザーによるオブジェクトへのアクセスを記録、レポートする機能を使うことで、ユーザーに対するアクセス権限付与が適切か否かをチェックすることができる。こうして、不適切なアクセス権の付与を防ぐことで、より厳格なセキュリティを確立することができる。データ漏洩の約半数は社内の人間が関与しているという事実を考えると、こうしたセキュリティ機能は重要である。

【4】『テレワークが日本を救う ~アフターコロナのニューノーマルな働き方とは?~』

株式会社テレワークマネジメント 代表 田澤由利氏

講師の田澤氏は、10年以上テレワークの将来性、重要性を訴え、テレワークの啓蒙、普及を推進してきたテレワークのパイオニアであり、テレワーク導入成功のポイントの解説は示唆に富んでいる。

<編集部注釈:当講演は12日のLIVE配信のみ、現在はご覧いただけません>

そもそもテレワークとは

テレワークとは、これまで「本来働くべき場所とされた所」から離れた場所で、時間を有効に活用しながら働く働き方を指す言葉であり、ICTを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を意味する。テレワークは様々な分野の多くの課題に対するソリューションを導き出す必須の働き方であり、これからの日本の働き方を変える。

テレワークの現状

コロナ禍以前(2019年秋)の調査では、テレワーク制度の導入企業は約20%、在宅勤務制度がある企業は約10%であった。しかし半分近くの企業では実際に使っている人は5%未満であり、テレワークの浸透はまだまだと言うのが実情であった。

しかし、コロナ禍を契機にこれが当たり前の働き方という方向に進みつつある。テレワークはコロナ禍が収束したら終わる一時的な流行ではなく、今後の世界における必須の働き方であるとの田澤氏の指摘は日本アイ・ビー・エムの伊藤氏の発言とも重なる。

テレワークに対する意識の変化

テレワークをした従業員へのアンケート調査では、過半数の人が今後のテレワーク継続には前向きな態度を示している。他方、経営者は、経営環境改善の可能性を評価している。

興味深いことにテレワークを経験したことで、オフィスの重要性が再認識されたという。これは「やはりオフィスで働くのが一番」という意味ではなく、今まで意識しなかった、「リアルな出会いの場所」あるいは「会って一緒に働くことで新しい発想や一体感が生まれる」といったオフィスの隠れた効能の重要性に気付いたという意味である。

日本を救うテレワークとは

今やテレワークは、ベンチャーなど特定の企業だけでなく、日本を代表する多くの大企業でも推進する動きが出てきており、日本の働き方が変わろうとしているというのが田澤氏の見立てであり、テレワークを成功に導くための重要な要素は次のようなものだという。

テレワークに必要なもの

テレワークは、Web会議のように単に機器を揃えさえすればそれで実現できるわけではない。むしろ運用ルールの確立の方が重要になる。現実のオフィスがもつ、「社員同士のコミュニケーションを通じ、新たな発想を得られる場」といった機能あるいは勤怠管理や進捗管理といったマネジメント機能を仮想空間上で実現することが重要になる。

意識や発想を変革せよ

テレワークのもう1つの重要なポイントは、テレワークに対する社員全員の意識の変革である。もちろん、テレワークではできない仕事があるのは事実だが、仕事のやり方を変えて、テレワーク化出来るように工夫するという意識改革を行うこともテレワークの推進には重要なポイントになる。「この仕事はテレワークでは無理」ではなく、「どうすれば、どの仕事がテレワークで解決できるか」というテレワーク・ファーストの発想法で考えるのがテレワークを成功に導く上で重要だと田澤氏は訴える。

【5】『i Magazineの動向調査と事例取材から見たIBM iユーザーの「今」』

i Magazine編集長 飯田恭子氏

i MagazineのIBM iユーザー動向調査(2020年3月実施)の結果とこれまでの取材経験に基づく、IBM iユーザーの「今」の状況と環境について興味深い話を聞くことができた。

ニュー内製主義

今IBM iユーザーの間では、社内でIBM i人材を育成し、アプリケーションの開発と保守を社内の人材で実施できるようにしようという動きが顕在化している。この動きにあえて「ニュー」を冠したのは、従来と違いRPG Ⅳの他にJavaやPHPなど別の言語も使ったアプリケーション開発がニューノーマルになってきているからである。

IBM iソリューション・ベンダーの現状と動向

i Magazine 2020 Autumn号では、コロナ対策を見据えたIBM iソリューション・ベンダーの動きを特集し、取材を行ったが、新型コロナの流行に対応するためにDXの流れが促進されており、想像とは逆にソリューション・ベンダーのビジネスは活発である。

IBM Power Systems Virtual Serverのインパクト

i Magazineはメディアとしてこのクラウドサービスに大きな関心をもっている。それは、

  1. IBMクラウドで提供されている様々なサービスを適宜選択して利用できる
  2. IBM iのベンダーが自社の製品をSaaSやPaaSとして提供することで、クラウドで利用できるソリューションが増える
というIBM iユーザーにとって2つの大きなメリットが期待できることによる。

IBM Power Systems Virtual Serverについては次号のi Magazineで特集する予定とのことである。

想像以上に使われているRPG Ⅳ

IBM iユーザーに対するアンケート調査の結果、56.7%がRPG Ⅳを使用中であり、55.1%が新規開発にRPG Ⅳを活用していることが判明した。これは一般に想像されているよりも遥かに多くの日本のIBM iユーザーがRPG Ⅳを使用している実態を浮き彫りにしている。

さらに、取材した企業の中でも、新しい取り組みを推進している企業はRPG Ⅳを活用していると感じられたと飯田氏は語る。

IBM iユーザーは情報と学びを求めている

現在、IBM iを学ぼうとするユーザーにとって、新たな知識を得ようとしても

  • 教材や学ぶ場が少ない
  • オープン系のような活発なコミュニティ活動が少ない
  • IBM iを使用している他社の仲間が少ない

という厳しい環境にあるとi Magazine社の人気ウェブ・コンテンツの分析を通じて飯田氏は考えており、この環境を少しでも良い方向に変えるために、IBM iの情報交換/共有の場として「IBM i Zoom雑談会」なるものを企画しているという。参加希望者は、iida@imagazine.co.jpにご連絡いただきたい。

以上5つが「iEVO 2020」トップを飾る基調講演であり、いずれもIBM i をお使いの中堅企業に向けて示唆に富んだ内容であった。 この他にも昨今のIT課題、事業継続、自動化、モダナイゼーション、AIなど、関心の高いトピックスをカバーしたコンテンツが多数掲載されているので、是非下記のURLにアクセスしてみてほしい。 (イベントサイトは2020年12月11日まで視聴可能) https://gateway.on24.com/wcc/eh/2762155/i-evolution-2020

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