スペシャル
RPG経験者のみ採用する、というアプローチは今後通用するか!? ITエンジニア紹介のエキスパートが語る「エンジニア採用対策」

2017年5月25日


2016年11月発表の厚生労働省「一般職業紹介状況」における 「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は2.52倍。前回9月調査時の2.35倍からわずかながらも上昇するなど、引き続き求職者側の「売り手市場」という傾向は変わっていません。エンジニアの募集を巡る環境は年々厳しさを増していますが、RPG・COBOLエンジニアを採用したいと考える企業はどのような対策が考えられるのでしょうか。前回、エンジニアのキャリア形成についてお話を伺ったITエンジニア紹介のエキスパート、株式会社テクノプロ・キャリア シニアコンサルタントの久保田 宜道氏に今回はエンジニアの採用の考え方から募集に際してのポイントまで話を聞きました。

求職者の転職における判断軸は大きく変化しつつある

エンジニアを募集する担当者の方にとって、もはや耳タコ状態かもしれませんが、一部の人気企業を除き、総じて採用状況は厳しいというのが実情です。もはや担当者の方にはエンジニア採用は厳しいのが当たり前だと思いますが、昨年から今年にかけ、さらに厳しさを増しているのではないか、というのが現場を踏まえた私の所感です。

大手を中心に転職サイトや当社のような人材紹介をビジネスとしている会社が積極的な宣伝をおこなっていることもあり、実は登録者という観点での求職者は増えています。インターネットや電車内、駅貼りの広告など、ビジネスパーソンにアプローチしやすいところに掲載されているため、ご覧頂いた方も多いことでしょう。ビジネスの堅調さを受け、募集する企業も変わらず多いものの、求人数の増加ほどマッチングが増えていないのが現状です。

なぜこのような状況となっているのか。私が面談などの現場を通して感じるのは、求職者側のスタンスの変化です。最近の求職者は「いいところがあれば」というスタンスで、転職を「マスト」ではなく「ウォント」と考える方が増えています。つまり、自分の希望条件が明確でそれに合致しない場合は転職しない、しなくともよい、という求職者が増えているということです。そして、過去には求職者の中に一定の割合で存在していた、会社の業績や将来性への不安、あるいは給与遅延などのネガティブな材料で転職活動に踏み切らざるを得ないという層が少なくなってきているように感じます。その背景には大きく、二つの理由があると推察します。

エンジニアの就労環境改善により転職の緊急性が低下

ひとつ目は、エンジニアの就労環境が改善されてきていること。エンジニアというと、映画化もされた「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」のようにデスマーチの連続というイメージが根強くあるように思います。しかし、最近はコンプライアンス遵守の風潮や離職防止の観点からか大きく状況は変わってきており、「ブラック」な就労環境は少なくなりつつあります。

社内投資の増加が社員の離脱をつなぎとめる結果に

そしてもうひとつは堅調な景気の影響で伸長している、社内投資の増加です。新規プロジェクトへアサインすることが、転職を検討していた従業員の引き止め材料となっているのです。調査により数字はばらつきますが、社内の投資を増やしていきたいと考えている企業は25~40%と言われています。社内のSEにとって、予算がないとやりたいこともままらなず、自ずとルーティン作業のみをこなすことになります。その状況はキャリア向上を目指す人にはモチベーションが上がりづらい環境です。しかし予算が増えると挑戦できる幅が大きく広がります。その分、仕事も忙しくなりますが、向上心が強い人にとってその状況はやりがい向上に繋がります。生き生きと働ける環境に身を置けることが離職予防につながっているのではないでしょうか。

「RPG未経験」のエンジニアを採用し育成する、という戦略

元々RPGやCOBOLの経験者は、自らがその言語を選択したというよりは、入社した会社の環境がそうだったというケースがほとんどだと思いますが、システムのモダナイズやダウンサイジングの流れとともにRPGやCOBOLに特化したエンジニアの数は減ってきています。
特に35歳未満のエンジニアはなかなかいないため、現実的なところだと45歳以上など年齢の高いベテラン層の方をターゲットとして設定することになります。さらに、候補者の方は転職を考えた際に「せっかく転職するのだから」とウェブ、オープン環境での開発や設計業務へのキャリアチェンジをお考えになる事が多いのです。

一方で、若いエンジニアもウェブやオープン系などのモダン言語を選択する傾向にあります。それは、JavascriptやRuby、Pythonなどのモダン言語は開発環境の整備が容易な上、これからも安定した需要が見込まれていることも大きな要因と思われます。このようなエンジニアの言語習得の状況を考慮すると、2つの方向で対処策を考えていく必要があります。

  1. 年齢が高いベテラン層のRPG経験者をターゲットとして採用
  2. RPG未経験者(他言語経験者含む)をターゲットとして採用

それぞれで考え方や対処方法が異なってきますので、分けて説明をしていきます。

1)ベテラン層のRPG経験者をターゲットとして採用する場合

職種を問わず一般的に、年齢が高い方ほど現実的な視点で転職先を選定する傾向にあります。そのため、知名度や待遇・条件、安定感といった企業や事業の特徴そのものが選定基準の大きな要素となります。まれに、親の介護などで引っ越さねばならない、など特別な事情で、引越し先の近隣で転職先を探しているため実際に働く場所だけを考慮する、ということもあります。しかし、そのようなケースは当然ながら少なく、この状況下では、よほどの体力ある企業である以外はラッキーな状況が重なり、運良く採用できた、ということくらいしか採用は見込めません。後述するような露出戦略や情報提供など打てる手はすべて打っていく必要があるかと思われます。

2)RPG未経験者(他言語経験者含む)をターゲットとして採用する場合

次に、RPG経験者にこだわらず「未経験者」をターゲットとする場合です。未経験者は経験レベルで大きく二つに分類できます。ひとつはRPG、COBOLは未経験だけど、他言語におけるプログラミングスキルは有している、というグループ。もうひとつはエンジニア未経験、または独学レベルというグループ。この二つのグループをモチベーション(縦軸)とスキル(横軸)の高低で二分し四象限化したのが以下のマトリクスです。

上記のうち、01の「他言語におけるプログラミングスキル有り/モチベーション高い」グループに対し、アプローチするべきなのは言うまでもありません。多言語でのプログラミングの感覚をベースに、高いモチベーションできっと入社から早いタイミングで戦力となってくれるのではないでしょうか。
次に、04の「未経験、独学レベル/モチベーション低い」のグループに対してアプローチするのは、当然ながら積極的にはオススメできません。それではスキルかモチベーション、どちらかが欠けている02、03のグループについてはどうすべきか、ここが非常に難しいところだと思います。

結論から申し上げると、自社を取り巻く状況や教育方針などを踏まえて都度判断をする、というのがベターだと考えます。一般論で言えば、03の「他言語におけるプログラミングスキル有り/モチベーション低い」の人材は「未経験、独学レベル」よりも早いタイミングで戦力となることでしょう。しかし、中長期的なスパンで考えた時はモチベーションの有無は成長に大きく関係してきます。すなわち、短期的なスパンで見るか、中長期で判断するか、でアプローチすべきグループが変わってくるのです。
モチベーションが低い状態で入社してもその社員に対し周囲が感化することでモチベーションを高く転化させることもありえます。逆に、モチベーション高く入社した社員でも教育体制の不備で成長がままならず、せっかく高かったマインドを大きく下げてしまうこともあります。入社させてしまえばなんとかなる、といった安直な考えで入社させたものの、高かったモチベーションを下げて早期に退職に至る、というケースは枚挙に暇がありません。これは会社もエンジニアも双方にとってマイナスであるうえ、何度もこうしたことが続くとエンジニアの間でレッテル貼りがなされ、それによって将来の採用活動が厳しくなる、ということにもなりかねないので気をつけてほしい点です。

FFRPGの利用はエンジニア採用でも有利に働く!?

仮に未経験エンジニアを採用できたとして、そのエンジニアをRPG・COBOL専業のエンジニアにするべきか、という点は非常に難しいところです。採用側としては専業で取り組んで欲しいというのも一理ありますが、おそらくそれだとエンジニアのモチベーションが大きく低下することになりかねません。先ほども申し上げたとおり、RPG・COBOLといった言語はレガシーと言われるように、エンジニアにとって習得するのはリスクであるととらえられがちです。また、これらの言語を扱うための5250グリーンスクリーンへの心理的抵抗感もあるでしょう。

そこで解決策として出てくるのがFFRPGを利用していくことです。FFRPGであれば、グリーンスクリーンを利用せずともRDiやOrionなど、オープン系と同じEclipseベースの開発環境で作業が可能となります。また、言語の特性もオープン系と近しく、RPGのような特殊な記述方法を覚える必要もありません。もちろん、IBM i・AS/400の特性などはしっかりと学習する必要がありますが、大概のエンジニアの場合、自身の必要なことは自発的に学ぶものです。IBM i 上でFFRPGが利用できるようになって以降、FFRPG推しの状況となっていますが、これはエンジニア採用の視点からも望ましい判断ではないでしょうか。

IBM iの業務をアピールするキーワード「継承性と連携」

エンジニアにアピールするポイントを検討する際に踏まえておきたいのが、エンジニア自身がどのような理由で転職をするか、という点です。転職サイトなどが発表している、エンジニアの転職理由のランキングを見ると、「スキルアップ」関係の理由が上位に並ぶ傾向があります。エンジニアは自身のスキルを上げることのできる環境に身を投じたい、と考える人が多いのです。そして、RPG の現場をエンジニアが遠慮する理由もここにあります。

「過去に構築されたシステムの保守だけしかしない職場は極力避けたい」

こうした心理が働き、RPG・COBOLという単語を聞くだけで敬遠するエンジニアが多いのです。IBM iは世間的にレガシーと言われるなど、過去の遺産のようにみなされることもありますが、実情は果たしてどうでしょうか。IBM iのメリット、それは過去の資産を継承しながらさまざまなシステム、新しい技術と連携することではなかったでしょうか。そして、事務処理に特化している分演算子がJavaなどと比較してもシンプルなため、RPGやCOBOLは言語として習得しやすいということに加え、過去のソースコードを通じ、企業活動の根幹をなす業務プロセスの理解がしやすい点も特筆に値します。
最近ではモバイルの活用からWatson AnalyticsやBluemixとの連携など、IBM i での新しい技術を利用するケースなどが出てきています。業務プロセス・エンジニアリングから最新テクノロジーの活用まで、興味をそそるようにアピールすれば新しいものを好むエンジニアの関心を呼ぶのではないでしょうか。今後もIBM iが「継承性」と呼ぶ、過去からの資産を活用する分野として、ビッグデータやIoTなど、IBM iとの連携はますます追求されていくはず。このような可能性をしっかりとアピールすることで、「レガシー」なイメージを払拭していけるのでは、と感じています。

採用対象に合わせた露出戦略と訴求ポイントで勝負する

それでは、先の段落で挙げたアピールポイントについて、どのような場所に露出し、どのような対象に向けて発信すべきでしょうか。順当に考えると、RPG・COBOLのエンジニア、もしくはそれに準ずるエンジニアが登録している転職サイトやエンジニア系のメディアなどに募集情報を掲載、あるいはスカウトメールなどでダイレクトにRPG・COBOLのエンジニアに接触する、ということになります。
しかし、このやり方だと従来のRPG・COBOLエンジニアにしか接触できず、先述したとおり、知名度や待遇などの企業の体力勝負となってしまいます。
ではどうすべきか。ここまでご覧になってきた方は既におわかりかもしれませんが、未経験エンジニアを対象とした露出戦略のもと、「継承性と連携」をベースに新技術の利用可能性を訴求したアピールをおこなっていく、ということになります。また、グリーンスクリーンの利用が実はマストではないというところなど、エンジニアが抱いているRPGへのマイナスな固定観念を払拭するための丁寧な説明も欠かせません。IBM iの業務に携わることはレガシーな環境に身を投じることになる、というわけではなく、むしろ新しい可能性を秘めていることをしっかりと伝えていきましょう。

選考検討のための情報は出せるだけ出す

エンジニアの採用環境が年々厳しくなる中、各企業の採用担当の方は従来の常識や方法にとらわれずできることはやる、とのスタンスでいろいろと手がけています。求人票の情報を充実させるのはもちろんのこと、それだけでは伝えられない情報を「採用サイト」に集約し、公開。もともと採用サイトは新卒学生向けのものが主でしたが、今や転職者に向けた「中途採用サイト」も意欲ある採用活動をおこなっている企業ではよく見かけるようになりました。
そして、採用サイトに加えて最近、増えているのが社内での業務の様子を伝えるための動画です。動画だと求人票やサイトなどのテキスト情報の裏にある行間まで伝えることができるため、応募時の判断材料にしやすいようです。動画はサイト以上に制作のコストやリソースなどがかさみますが、応募側からすると大きな判断材料となります。このように企業側の情報公開が進んでいる状況だと、応募側のエンジニアにとってはそれが基準となり、情報があまり多くない企業については情報がないがゆえに、判断できない。だから応募しない、ということになってしまうのです。

私が求職者の方に、求人案件を提案した際に、すでに他の紹介会社からも紹介されているが、その案件には応募していない、という回答をもらうことがあります。なぜ応募をしてしないのかを聞いた際に出てくるのが、「募集内容がよくわからなかった、判断できなかった」という声です。記載されている情報がざっくり、曖昧過ぎて検討のテーブルに上げられなかったというケースは少なくありません。その後、私から募集の背景や求める役割などをきちんと説明した結果、その求人が第一志望になることさえもあります。

30代後半以上の方の場合、自分の就職活動ではまずざっくりとした情報をベースに応募し、選考で話を聞いてからその先のステップに進むか判断していた、という人は少なくないでしょう。しかし、それが若いエンジニアに対してあてはまるわけではありません。最近の若いエンジニアは応募の前に現存する情報をしっかりと読み込み、判断をしたい、という傾向にあります。そして、「情報がよくわからないから検討の選択肢から外す」という判断も実際になされています。

また、昨今のブラック企業報道などを通じ、若い人たちは求人票やサイトの記載内容が真実とは異なるケースがあることを前提に置いています。求人票やウェブサイト、動画など伝達の方法を問わず、自社の状況を正確に描写することが信頼獲得に繋がります。離職率や残業時間などには具体的な数字を入れ、特有の事情がある場合はその理由もしっかりと記載をするだけで求職者側からの印象は大きく変わります。

これは現場で面接などを担当されている方であれば納得頂けるかもしれませんが、エンジニアという職種の方はすべてではないものの、求人票や採用サイト、そして企業側が発信している以外の情報なども含め、実に多くの情報を収集し、選考に望みます。だからこそ、応募の動機形成のための情報は惜しまず提供するべきでしょう。

誠実に自分たちの仲間として受け入れる気持ちを持つこと

ここまではどのように採用対象を設定し、どこをどのようにアピールするか、といった観点からお話をしてきましたが、
最後にもっとも重要だと私が考えていることを二点、お伝えします。

ひとつめは会社、経営陣と現場が一体として同じベクトルで危機感を持って採用活動に取り組んでいるか、という点です。縦割りな組織体制で、自分の関係する業務範囲外は我関せず、というのは日本企業にありがちなケースですが、このような姿勢だと、自発的に動くエンジニアの心は惹きつけることができません。
経営陣は現場任せにせず、現場も言いたいことだけ言うのではなく、現在の転職市場がどのような状況にあるのかを理解し、求職者側が求める情報を経営陣、現場の両サイドが協力して適切に発信していく、という姿勢がエンジニアにとって魅力的に映ります。そして、当然ですがエンジニアに対し人足として捉えるのではなく、「自分たちの仲間として迎え入れる」という気持ちを持って採用活動に臨むことです。

この二点を重要とみなさない企業の場合、採用プロセスのどこかでボロが出てしまい、応募側の辞退につながってしまうことや、エージェントに「良くない会社だ」と思われてしまい、人の紹介がなくなるということは多く発生しています。逆に、企業の体力や知名度では到底戦えないスタートアップなどで、この二点がしっかりとしているゆえに採用に成功した、という話も最近は多く聞くようになってきました。

もちろん、なんでも受け入れ、三顧の礼でお迎えする、ということではありません。エンジニアの性格、傾向を理解し、誠実に向き合う、対等な目線で必要な情報は開示する、という人間のコミュニケーションとして当たり前のことをする、ということです。

IBM iを巡る環境はここ数年のバージョンアップにより、いわゆる「iの人」以外にも関心を持ってもらえるような状況に変化しつつあります。その可能性をしっかりと伝え、興味を持ってくれた応募者が貴社の門をくぐり、新たな「iの星」となることを心から願っています。

<キャリアコンサルタント プロフィール>

img_career_profile
株式会社テクノプロ・キャリア
シニアコンサルタント 久保田 宜道氏

大手技術系人材サービス関連企業の人材紹介会社にて、IT分野を中心に人材紹介にたずさわる。これまで対象としてきた紹介先企業は、外資系ITコンサルティングファーム、国内大手SI企業、パッケージベンダー、インターネット関連サービス企業など。2000名以上のエンジニアとの面談実績あり。単純なスキルマッチングではなく、企業と人を信頼で繋ぐ架け橋になることを目指し、マッチング精度と転職後のキャリア形成を視野に入れたサポートをおこなう。

テクノプロキャリアのウェブサイトはこちらから