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「IBM i TECHセミナー2017春 ~企業活動の根幹を成す基幹システム基盤としてのIBM iの価値を見直す~」セミナーレポート


2017年3月7日、iCafe主催のセミナー「IBM i TECHセミナー2017春」が、日本アイ・ビー・エム株式会社のイノベーションセンターセミナールームにて開催。今回、「企業活動の根幹を成す基幹システム基盤としてのIBM iの価値を見直す」をテーマに3名の登壇者による講演がおこなわれました。
iCafeで連載するコラムもご好評を頂いている、日本アイ・ビー・エム株式会社のエバンジェリスト・安井賢克氏とティアンドトラストの取締役・小川誠氏も講師として登壇。今もっとも注目を集めているWatson AnalyticsとIBM iの連携や、基盤の維持・拡張時に必要となる最新開発環境などについて解説されました。同セミナーは大阪・名古屋と今回の東京の計3会場で開催され、参加者も延べ200人超の大盛況ぶり。IBM iのさらなる活用でビジネスをよりよくしていくためにはどうするべきか。最先端の知見に注目が集まりました。

Watsonをデータサイエンティストに、自社のビジネスにドライブをかける

セミナーは、安井氏の講演からスタート。「IBM i 最新情報と Watson Analyticsの活用例」と題し、
IBM i 搭載のPower Systemsを取り巻く最新情報と、Watson AnalyticsによってIBM i上の基幹業務データをどう活用できるのかが紹介されました。

安井氏が最初に強調したのは、AIに対するIBMの取り組みと、ディープ・ラーニング・アプリケーションにおける並列処理性能の重要性でした。ヒトの脳内にある、複雑にネットワーク化された無数の脳神経細胞(ニューロン)をモデル化して稼動させるアプリケーションにおいては、通常の業務アプリケーションに求められるのとは異なった視点での性能が求められます。

IBM Power Systemsのシリーズの中でも現在市場で熱い注目を集めるS822LC、通称Minskyは、POWER8プロセッサの他に、3,584ものコアを搭載することで膨大な並列処理に効果を発揮するNVIDIAのプロセッサ(NVIDIA P100 GPU アクセラレータ)を搭載しています。連続処理に最適化されたPOWER8と並列処理用のGPUアクセラレータとの間で、処理のタイプに応じて分担作業を行っているのですが、その際GPUにどれだけ大量のデータを迅速に供給できるかで効率が大きく変わります。POWER8では、GPUとのリンクにPCleの2.5倍もの帯域を持つNVLinkを採用することで、他社とは比較にならないほどのスピードを実現。「最大限にそのポテンシャルを引き出すことができる」と説明しました。「MinskyなどLinux専用パワーシステムにおける技術的優位性は、OpenPOWERという300近くもの企業、研究・学術機関など、POWERプロセッサを中心とした開発コミュニティによってもたらされているのです。」

製品開発体制がオープンであることもさることながら、もっとも参加者の注目を集めたのは、やはりWatson Analyticsのトピックスでした。Watson Analyticsとは、機械学習と自然言語学習を組み合わせた「考えるシステム」であるWatsonをデータ分析用に特化させたシステムのこと。Bluemix(クラウド)上のWatson を自社の専属データサイエンティストとして活用し、その分析ノウハウを社内システムで実践・運用していくことができます。

また、同講演では、架空の航空会社をモデルに、顧客満足度に関するデータを用いたデモンストレーションが行われました。例えばアップロード済みCSVファイルのカラム・ヘッダーにある「顧客満足度」といった単語を入力するだけで、Watson Analyticsはそのカラムに関連する分析方法を自動的に推奨・提示します。結果を見ながら分析軸を変えてみたり、より細部に至る分析を行うなど、さまざまな可能性があることを感じることができ、参加者の方々は、SoE分野への活用の実践的なヒントを得ることができたようです。
安井氏は「ITは、これまでのSoRだけでなくSoEの領域での活用が広がり続けています。そうした状況を踏まえて進化し続けるIBM iのメリットを最大限に享受し、ビジネスの課題を解決していただきたいと考えています。Watson Analyticsには無償版も用意されていますから、まずはそちらで試してみてください」と話し、同社のソリューションを活用した「攻め」のシステムへの転換を推奨しました。参加者の方々からも、「早速、無償版を試してみたい」という声が多く寄せられていました。

最新環境で、効率的な開発を実現し、今ある資産を大切に継承する

安井氏の次は、「IBM i アプリケーション開発最新事情」と題した小川誠氏の講演。ここでは、最新の開発環境を整えることで、IBM iにおけるアプリケーション開発をより効率的で持続的なものにする知見が紹介されました。

小川氏は、「閉ざされた世界で、技術者もなかなか育っていかない。そんな課題を抱えているIBM iですが、近年では、言語やインターフェースのモダナイゼーションが進んでいます。最新の開発環境によって、その業務効率や教育コストの問題は確実に解決することができると断言します」と語り、現状の課題を整理(※下表)。それらを解決に導く、2つのツールを紹介しました。

IBM iユーザーにとって、大きな悩みのひとつが「RPGへの苦手意識があるプログラマーが多い」ことです。5250操作にどうしても慣れない。JavaやScript言語の経験はあっても、独自性があるRPGプログラミングのスキル習得に苦労している……。そんな、よく聞く悩みを解決してくれるのが、「RDi(Rational Developer for i)」です。

このツールは、eclipseベースの統合開発環境で、RPGやCLなどIBM iの開発言語をサポートし、ソースの編集からコンパイル、デバックまで一連の開発操作をサポートしてくれるもの。これによって、RPG初心者が感じる操作性のハードルを大きく下げ、eclipseならではの機能で開発効率が大幅に向上。さらに最新のRational Developer for i9.5.1では、Access Client Solution(ACS)との機能連携により、RDiの画面からSQLスクリプトの実行やプリンター出力機能なども使用可能になっているといいます。また、同ツールは、これまでは対応していなかったMacでも使用可能となったこともあり、これまで以上に使用者が増えることが期待されています。

一方、自社のシステムを「フロントはWeb系を、バックエンドではRPGを使っている」というケースも散見されます。そのような場合、それぞれに開発者が異なることで資源間でのバージョン管理ができていない。5250とeclipseなど複数ツールを使い分けての開発が行われていて煩雑であるといった課題が生じます。

それらを解決してくれるのが、オープンソースの開発ツール「Orion」です。同ツールは、Bluemixでも採用されているブラウザー・ベースの開発環境であり、各種プログラミング言語のソース編集が可能。さらに、Java Scriptなどのweb系言語だけでなく、ILE RPGも編集することができます。「Orion」導入のメリットは何といってもクライアント側のセットアップいらずで、手軽に使えること。さらに同じくオープンソースのGitというバージョン管理ツールと連携可能になることも大きなメリットだと小川氏は話します。

「長年、IBM iを運用していると、プログラムの仕様書や変更履歴が埋没していることや、開発者の離職などにより資産の管理ができていないことがあります。RTCやGitを活用し、構成管理を徹底することで、今ある資産を大切に継承していただきたいですね」とし、新しい開発環境がもたらす可能性に期待を寄せ、セッションを締め括りました。

データ保全について、定期的な見直しをすることで万が一のリスクに備えを

自社が蓄積したデータをビジネスにより有効に活用していく。そのためには、しっかりとデータ保全に取り組んでいくことが必要不可欠と言えます。IBM i Techセミナーの最後に登壇したのは、株式会社イグアスの森照寿氏。「~IBM i のデータ保全を見直す~最新バックアップ手法ご紹介」と題し、IBM i上のデータ保護に関して具体的な手法に関して解説しました。

森氏は、「D2T(Disk to Tape)」「D2D(Disk to Disk)」「D2D2T(Disk to Disk to Tape)」「D2D2C(Disk to Disk to Cloud)」など多様なバックアップパターンの中から、課題・要望・ニーズに合わせ、それぞれの企業に最適なバックアップ手法を選定すべきだとした上で、「バックアップを取っていることで安心している企業が多い」と指摘。データをリカバリする上で注意すべき点を列挙しました。

旧規格のメディアが読み込めるのは、過去三世代までであり、互換性がなければレストアできないこと。古い機器を使い続けていると、ハードウェアの障害率が高くなるだけでなく、復旧にかかるRTO(Recovery Time Objective)のリスクが伴うこと……。
さまざまなリスクを提示するとともに、テープを繰り返し使用し続けたことで劣化してしまったことが原因で、リカバリ途中で読み込みエラーが発生し、必要なライブラリが復元されず業務を再開できなくなったという実際の事例を紹介し、その危険性を強調しました。

「大切なのは、定期的なリカバリ検証でシステムが復旧できることを確認しておくことです。バックアップ自体はしていても、障害発生時の復旧作業については運用担当者も経験が少ないことがほとんど。当社のCAMSSセンターでは、実際にバックアップの検証を行える施設が整っていますから、そちらを活用していただき、年に1回は検証をしていただきたいですね」(森氏)

また、講演の最後には、PCサーバー上でいつでもバックアップ内容が確認でき、ブートDVDによって簡単に復元できる新たなバックアップソリューション「LaserVault Backupバージョン4」を紹介。LTOドライブやメディアの互換性も意識する必要がない、使いやすさがポイントとのこと。さらには、遠隔地やクラウドに予備機を設置することで二重化構成を実現する「MIMIX」や「MIMIX DR」も紹介され、自社のデータ保護に関する最先端のソリューションを紹介し、セッションを締めました。

今回の3つのセッションを通じて感じたのは、「攻め」と「守り」のバランスの重要性。最初のセッションで紹介のあった「Watson Analytics」のような最先端の技術を取り入れて挑戦していくことは今後より加速度を増すITビジネスにおいては必須の姿勢です。一方で、2本目のセッションでの解説にあった、開発環境をしっかり整備することも、新たな開発人材を呼び込むための布石として重要です。そして、堅牢なシステムと言われながらもSoR領域との連携で高まるセキュリティリスクを踏まえたバックアップをしておくことで、はじめて安心した「攻め」も可能になると言えそうです。
今後より一層高まるデータの重要性を踏まえた時、IBM iに積み上げてきた基幹データは重要な資産となりうるポテンシャルを秘めています。その活用には「攻め」だけでなく「守り」もしっかりとしたバランスが必要だということを感じたセミナーでした。

本セミナーの資料もダウンロードできますので、動画と合わせて自社のビジネスにお役立てください。


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