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「製造業におけるIoTの活用と業務プロセス管理~既存システム資産を活かしたSoEへの取り組み~」セミナーレポート


2017年6月14日、ゼネラル・ビジネス・サービス株式会社(以下、GBS)が主催するセミナー「製造業におけるIoTの活用と業務プロセス管理 ~既存システム資産を活かしたSoEへの取り組み~」が、日本アイ・ビー・エム株式会社セミナールームにて開催されました。

昨今、ドイツを中心としたIndustry4.0や、アメリカのインダストリアルインターネットなど、IoTの推進に向けた環境が進展していくなか、すでに多くの製造業がIoTへの取り組みを開始しています。そのような背景の中、IoTのトレンドと現状を探り、具体的な事例を交えて課題と解決を紹介するセッションが開催されました。iCafe編集部のセミナーレポートをお届けします。

日本の製造業の強みと、IoT活用へのアプローチ

最初に登壇したのは製造業向けシステムの営業・コンサルティングやプロジェクトマネジメント支援を手掛ける株式会社アムイの代表取締役山田浩貢氏。山田氏は「日本のモノづくりを活かすIoTの活用方法について」と題し、現在、製造業がIoT導入を急いでいる背景と、具体的な導入、活用方法を解説しました。

まず、山田氏は日本の製造業の強みが「現場主導による製造管理」であることを示しました。

「例えば、トヨタ系の工場では床に線が引いてあり、そこにどの工程のどんな資材を置くかが決まっています。要員の交代や製造工程が変化しても、すぐに現場を理解できるようになっています。こうすることで、さまざまな無駄や単純ミスを削減できます。こうした現場力が日本の強みです」

一方、製造業を取り巻く環境変化への対応も重要と指摘しました。

「製品ライフサイクルの短期化や海外展開、グローバリゼーションへの対応などを含めた少量多品種生産体制、生産拠点の統廃合、コスト競争力強化などへの対応がありますが、これらを達成していくために必要なスピードに対応できていないのが現状です。IoTの導入がこうした課題の有効な解決手段になります」

しかし、IoT導入のためには、センサーや情報端末などの機器、工場LANなどのネットワーク、ビッグデータ解析やAIなどのソフトウェアをIoT基盤として用意し、設備管理や現場管理、品質管理などの業務に活用していく必要があります。

「現在、共通インフラについては、センサーによる“データ収集”部分に注力している段階です。従来は設備に付属しているPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー:シーケンサー)から、社内ネットワークを通じて工場用サーバーにデータを送る方法でしたが、外付けのセンサーから取得できる情報を、IoTゲートウェイ経由でクラウドサービスに保管するという方法が加わりました。クラウドサービスの利用は、IBMのBluemixであれば既存環境のクライアントサーバーシステムとの共存が可能であり、WatsonのAPIも利用できるため導入は容易です。PLCの10分の1以下にコストを下げられるIoTゲートウェイの利用など、現在品質や保守性の実証実験が行われているところです」

そして、その効果の例として、設備管理の予知保全をあげました。

「たとえば、過去の使用数とメンテナンス時期のデータが自動収集され、手動で入力した情報収集もできていれば、メンテナンス時期を予測することができ、温度や振動などの異常データを収集することで、より正確なメンテナンス時期を予知できるようになります。」

最後に、現場改善や品質管理、環境管理、損益管理などでもIoTの活用は可能であり、無駄の徹底排除だけでなく、工程から仕入れ先、顧客まで拡大したサプライチェーンの最適化、現場作業者の生産活動への専念と、その情報から現場改善の勘所が即座につかむことが可能になるなど、IoT活用の魅力をまとめました。

IBM Watson Analyticsをデータサイエンティストとして使う

続いて「IBM i最新情報とWatson Analytics」と題し、日本アイ・ビー・エム株式会社システムズ・ハードウェア エバンジェリストの安井 賢克氏が登壇。

最近ブームとなっているAIを、IBMではArtificial Intelligence(人工知能)ではなく、Augmented Intelligence(拡張知能)として、人の活動を手助けする位置付けと述べました。また、ブレークスルーを迎えているディープラーニングについては、それに適したPower Systemsのラインナップ、ディープラーニングを利用するためのオープンソースのAIライブラリ「PowerAI」について説明しました。

「ディープラーニングでは膨大な行列式の演算が行われます。この演算において、Power Systemsでは同時に数多くの並列演算を行うのに適したNVIDIAのGPUを使用します。このシステムはOpenPowerという開発コミュニティーが作るオープンなシステムです。そして、Intel系のサーバーにはできないことをやっていこう、と市場を広げていこうとしています」と、安井氏はディープラーニング向けのモデルを紹介しました。

POWER8を搭載したIBM iのモデルは汎用的な利用で威力を発揮しますが、APIを使ってクラウド型のAIとして利用することも可能です。

「IBM iは基幹系のデータをたくさん持っていますが、それだけを分析していたのでは新しい発見はなかなか出てきません。既存の販売管理のデータに温度や湿度、地域の人口動向などといったさまざまな外部データとつなげることで、より多くの知見が生まれてくるでしょう」と、安井氏は説明し、Watson AnalyticsによるAI活用を提案しました。

講演で公開されたのは、Watson Analyticsによる航空会社の顧客満足度調査データのデモです。フライト関連情報と会員情報、満足度調査結果が含まれているデータを読み込むだけで、複数の分析候補が表示されます。
その分析候補の中から「出発地ごとの満足度」をクリックすると、アメリカの州ごとの満足度がグラフ表示されました。デモでは「デラウェア州」の満足度が低く、これをフライト情報に照らし合わせるとデラウェア州出発の便では遅延が多いことがわかり、遅延と満足度低下の関係が理解できました。

同様な分析をExcelで行うのは手間がかかりそうですが、Watson Analyticsなら簡単な入力やドラッグアンドドロップで分析結果を得ることが可能です。安井氏はほかにもアメリカ人の週給を、労働時間と学歴の関係性で分析する興味深いデモを見せてくれました。

「IBM iは従来型の基幹系のデータを扱うSoR(System of Record)のシステムですが、新しい技術を使うSoE(System of Engagement)のWatson Analyticsを組み合わせることで、ビッグデータを活用できます。IBM iは、常に2世代後までの開発計画が明らかになっているため、継続的な利用が可能です。一部機能の制限はありますが、無償版は30日間利用が可能なので、Watson Analyticsを体験してみてください」とIBM iとWatson Analyticsによるデータ分析体験を呼びかけて、話を結びました。

intra-martならSoRとSoEの共存が可能

次は「SoRとSoEの共存~バイモーダルIT時代におけるPOWER iAP on i の有用性~」と題した、ゼネラル・ビジネス・サービス株式会社技術開発本部intra-mart認定エバンジェリスト恩田将氏による講演です。

GBSは日本アイ・ビー・エム株式会社のSMB部門から独立し、設立当時からIBM iの開発に取り組んできました。また、intra-martの開発にも携わっているため、IBM iとintra-martのシナジーによる効果の高い提案をクライアント各社に行っています。

恩田氏は、市場が求めるIT投資のポイントとして次の3つを挙げました。

(1) IT投資の『選択と集中』
(2) プロセス(業務/作業)の見える化
(3) 運用のITから、利益創出のITへ

これらを実現するためには、企業の情報システムをSoRとSoEの2つに分類することが重要になります。前者が従来型のアプリケーションで基幹システム等の記録型のシステム、後者は顧客との接点を担うためのシステムです。

「この2つのタイプは性格が異なるため同じ作り方ではだめです。SoRは変更が少なく、堅牢性が重要なので従来型のウォーターフォールの開発が適しています。SoRのシステムは社内向けが多く、ガバナンス重視です。一方SoEは、継続的変更が必要です。利益を生み出す、自社のコアになるようなシステムで、どんどんトライ&エラーで変更していく必要があるため、いままでと違い現場主導でオープンソースなどを使い、アジャイル型の開発が適しています」

しかし、実際の企業の現場では、従来のSoRのメンテナンスや改善も続けながら、SoEやクラウド移行でも既存の資産を活用していきたいというニーズがあります。こうしたSoRとSoEの共存環境の構築にはintra-martの利用が適していると説明がありました。

「intra-martは統合化されたシステム基盤です。複雑なアプリケーションでもノンプログラミングでの開発が行えます。また、POWER iAP on iは、intra-martをIBM iで稼働させることができます。POWER iAP on iを用いることで、SoR領域(基幹システム)を継承しつつ、段階的にSoE領域へ移行することも可能です。さらに、IBM iも継続性に重点を置いた開発がなされているため、intra-martとの相性がよく、安心してこの組み合わせで継続利用ができます。

将来構想としてはSoE寄りで、BPM(Business Process Management)やRPA(Robotic Process Automation=日常業務の効率化)、Watson連携やIoTへの利用も増えていくでしょう」と、今後の発展に期待を表明しました。

IoTテンプレートで、点検から決裁まで完結できる設備保全

最後は、株式会社アムイの山田代表取締役とゼネラル・ビジネス・サービス株式会社 事業推進本部の蒲生貴礼氏の共同セッション、「intra-mart IoT設備保全ポータル」の紹介でした。
intra-martとIoTの技術を活用した設備保全の業務についてのデモンストレーションです。

デモは、架空の工場の設備点検について、IoTセンサーで情報を収集し、intra-martを利用した「IoT設備保全ポータル」 (以下、IoTポータル)で共有することで、部署・拠点を横断したスムーズなワークフローを実現するというものです。

はじめに、IoTセンサーを設置した工場の設備から収集したデータが、クラウド経由でポータル画面上にリアルタイムで表示されるデモを解説。センサーの数値が、あらかじめ設定された限界値を超えると、異常として画面に表示され、それを関係者で共有できることがわかります。

次に行われたのは、IoTポータルに収集された各設備の情報から定期点検、修理、報告という実際のワークフローを想定したシナリオのデモです。

まず、IoTポータルの点検担当者用画面で、その日の点検予定リストを開いて各情報の点検を行います。機種などの設備情報も表示されるので、どのメーカーのどの機種の点検が必要かもすぐにわかります。

そして、あらかじめ決められた基準値で合否を判断し、不合格の場合は修理部門にその場で修理依頼登録を行います。情報が集約されているため、点検から対処まで効率的に誰でも点検が行えるわけです。

「IoTポータルでは同じ画面で動画や画像の貼り付けが可能なので、点検業務の流れを貼りつけておけば、新人の担当者でも何をどう点検すべきかが理解でき、属人化を避けることができます。紙だと点検項目の変更などに労力がかかりますが、ポータル画面はマスターで管理されているため、業務の変更伝達がスムーズです」

続いて、さきほどの不合格だった設備の修理依頼を行うとIoTポータル画面に戻ります。点検完了した項目からは、修理依頼や申請の進捗状況も確認できます。

修理担当者の画面では、点検者の修理依頼に対しての業務がスタートします。「未処理ポートレイト」に依頼項目が入っているので、それを見て修理作業を行い、完了したら「設備種類保全登録」を行います。これによって、修理担当の上長に承認の作業が発生し、上司は申請されたデータに対して確認し、承認を行います。

「これで、点検から修理、修理報告という業務が完了します。このように各業務を見える化することで、担当者に属人化しない業務終了までの流れが実現でき、途中の見落としなどによる二次災害などが排除できます」

GBSでは、今後、このテンプレートを2つの方向で発展させていく予定です。
ひとつはビッグデータを利用して設備保全の傾向と分析を行い、予知保全の精度を向上させることです。IoTセンサーのデータだけでなく、担当者が何を行ったかの作業実績データ(アクティビティデータ)をBluemixに蓄積し、Watson Analyticsでトラブルの傾向値などを分析したうえで、この値を元に一定条件を超えた場合アラートを発生させるという仕組みです。

もうひとつはAIを使った予知保全です。販売計画の増加を認識したWatsonから担当者に「増産の事前に設備を点検した方がいい」というメッセージが伝えるというものです。それに対応した担当者が、点検結果の異常をWatsonに報告し、Watsonから修理指示が自動で出ます。このようにWatsonと現場担当者の間で完結する予知保全が可能になり、ベテランの保全員に頼る属人化が避けられるようになると言います。

このようにGBSではビッグデータの収集と分析で終わるのではなく、AIを活かしたさらなる効率向上の展開にも取り組んでいく予定です。

まとめ

IoTは導入して終わりではなく、データの収集から分析、フィードバックまでのサイクルを継続的に回していく必要があります。そうした継続性を実現することで、設備保全をはじめとする製造現場での業務課題にどんな効果が得られるのかが、具体的に実感できるセミナーでした。
また、IBMのPower Systemsとintra-martにより、従来のSoRのシステムと、AIやSoEを並行する形で導入が可能なことも理解でき、これからIoT導入や活用への取り組みを考えている参加者には、その道筋が明確に見える有意義なセミナーでした。


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